研究概要 |
Ni-Tiファイルの機械的性質は,熱処理によって大きな影響を受ける.そこで,本研究では,熱処理がNi-Tiファイルの曲げ特性,根管形成能および疲労特性に与える影響を明らかにすることを目的とした. Ni-Tiファイルを用い, 400℃, 450℃および500℃の3条件で熱処理を行った.熱処理時間は各群とも30分に設定した.熱処理を行わなかった群をコントロールとして使用した.まず,片持ち梁式曲げ試験を行い,弾性領域および超弾性変形領域において,熱処理による曲げ特性の変化を計測した.アクリル樹脂製模擬湾曲根管模型を使用し,根管形成を行った.形成前後の根管形態の重ね合わせを行い,内湾側および外湾側の切削量について,根尖部より6mm以内部の計測を行った.また,回転曲げ疲労試験を,回転速度250rpmで,ファイル先端2mmを1. 0および2. 0mm変位させ,その変位量を一定としたまま,回転数250rpmで,破断するまでファイルを回転させる,回転曲げ疲労試験を行った.同試験より,破断に要した回転数を記録した. 片持ち梁式曲げ試験の結果から,弾性領域において, 400℃および450℃熱処理群は, 500℃熱処理群およびコントロールに比較し,低い曲げ荷重を示した.一方,超弾性領域では,全ての熱処理群で,コントロールに比較し,低い曲げ荷重を示した.根管形成能の評価から,根尖部の形成において,コントロールに比較し,全ての熱処理群で,湾曲外湾側への切削量が少なかった.回転曲げ疲労試験から,コントロールと比較し, 450℃および500℃熱処理群は, 1. 0mmよび2. 0mm変位時両方において,高い疲労寿命を呈した.一方, 400℃熱処理群は, 1. 5mm変位時においてのみ,疲労寿命の向上を認めた. 以上の結果から,熱処理によりニッケルチタンファイルの柔軟性および疲労寿命が向上することにより,特に湾曲根管において,より効果的に根管形成が行える可能性が示唆された.
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