研究概要 |
高濃度の過酸化水素を用いるウォーキングブリーチや生活歯のOffice Bleachingはエナメル質脱灰や歯周組織傷害性が問題視され, より安全性の高い漂白材が望まれている.カンファスイのバイタルブリーチングへの臨床応用を検討するために有効塩素濃度および歯周組織に対する細胞障害性を検討した。細胞障害性試験供試液としてカンファスイ(pH6.5)を使用し、歯肉上皮細胞と歯肉線維芽細胞に対する細胞障害性を測定した結果、歯周組織に対する障害性は認められなかった。増粘材による有効塩素濃度維持の検討を行った結果、アルミナおよびガラスでは残留塩素濃度の低下は認められなかったものの経時的に沈殿が認められた。HAPはカンファスイとの混和によりクリーム状となり、180分経過後も残留有効塩素濃度の低下は認められなかった。これらの結果より、カンファスイは安全で、かつHAPを添加することにより臨床応用が可能であることが示唆された。漂白材が歯面に対する影響を検討するため、カンファスイおよび35%H_2O_2のエナメル質および象牙質の微小硬さ試験を行った結果、カンファスイは象牙質表面の硬さを減少させるがエナメル質にはなんら影響を及ぼさないことが示唆され、これよりカンファスイはウォーキングブリーチ法への適応は適切でなく、vital bleachingに適した漂白材といえる。また、根面が露出した状態での漂白にも不適切であると言える。また漂白効果については以前表面の着色に対して確実に漂白効果が認められたが、変色歯に対しての漂白効果はさほど効果が認められなかった。これより象牙質の変色が強いもの、および細管の走行が不規則になっている歯に対してあまり効果は期待できないと思われる。ただ、入手が困難であるため今回は新鮮抜去歯を用いての漂白実験が出来なかった。今後臨床を見据えたヒト新鮮抜去歯での実験が必要であると思われる。
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