研究課題
若手研究(B)
iPS細胞(induced pluripotent stem cells)は体細胞に数種類の遺伝子を導入することによってES細胞(embryonic stem cells)に似た分化万能性を持たせた細胞である。本研究の目的は、口腔癌の新しい治療方法として、iPS細胞を用いた免疫療法を実現するための基盤技術を確立することである。我々は、京都大学において樹立されたマウスのiPS細胞を入手し、口腔癌の骨転移に極めて深く関与することが知られているミエロイド系樹状細胞と破骨細胞への分化誘導条件の確立を試みた。まず、これらの細胞の分化誘導を支持する可能性をもつ種々の骨芽細胞様の細胞株とiPS細胞を共存培養し、そこに様々な分化誘導因子候補物質を添加した。骨芽細胞株とiPS細胞を共存培養する際の細胞数や処理する分化誘導候補因子の濃度、細胞の培養時間など、様々な条件について検討した結果、骨芽細胞株UAMS-32の存在下において樹状細胞と推察される高い貪食能をもつ細胞の分化誘導に成功した。さらに培養日数を延長することによって、破骨細胞と同様に骨吸収能を有する多核巨細胞の誘導に成功した。これらの細胞の分化誘導効率は支持細胞である骨芽細胞株の種類によって大きく変化した。以上の結果は、iPS細胞から誘導した樹状細胞を癌の免疫療法に用いることができる可能性と、iPS細胞から破骨細胞の分化誘導過程を阻害する物質を開発することにより、口腔癌の免疫療法の改良や癌の骨転移抑制に役立つ可能性を示唆する。
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Tissue Engineering
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