研究概要 |
本研究は,人間の運動と感覚の相互予測的な関係に,触覚インタフェースで介入することにより,1.運動の誘発および,2.自己受容感覚(運動や力の感覚)の誘発を試み,そのメカニズムを構成論的に探る.本年度は,実施計画に従い,これらの実験的検証を行った. 1. 運動の誘発:人間が指で紙面などをなぞる運動と,それに付随する指腹のせん断変形には,運動と感覚という観点から密接な関係がある.そこで,指腹にせん断変形を提示するデバイスを開発し,なぞり運動と指腹のせん断変形に介入する実験を行った.その結果,なぞり運動中の指腹のせん断変形を拡大することにより,人間の指の移動距離(なぞる距離)が大きくなるような運動が誘発されるということを確認した.また,紙面の摩擦知覚にも影響が生じることを内観報告より確認した. 2. 自己受容感覚の誘発:物体を把持し,左右に揺するとき,それに付随して指腹はせん断変形する.せん断変形にともない,触覚の機械受容器は活動する.この機械受容器を皮膚の上からの振動により刺激するデバイスを開発した.手が物体を揺する運動に同期し,振動刺激を提示することにより,物体の質量および粘性という機械パラメータの錯覚が生じることを実験的に示した. 以上の研究成果は,査読つき論文2編,学術受賞1件(第16回ロボティクスシンポジア優秀論文賞)の成果を収めた.
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