研究概要 |
排水処理技術として最も一般的な活性汚泥法では、汚水の処理に伴い余剰汚泥が発生する。余剰汚泥は脱水、焼却により処理をされているが、これらの処理過程にて高濃度の難生分解性有機物質を含む廃水が発生する。この廃水は,水処理施設の上流へ返送される。これを返流水という。返流水にともなう負荷が,水処理系への流入負荷量を大きく増大させ,処理水質の低下及び,処理コストの増大,難生分解性物質の河川への流出が大きな問題となっている。 フォトフェントン反応は鉄イオン、過酸化水素、光エネルギーの反応により,高い酸化力を持つOHラジカルを高濃度に生成する反応である。フォトフェントン反応により、難生分解性有機物質や,高濃度の汚染有機物質を迅速に低コストで処理することができる。 本研究では,標準活性汚泥法へのフォトフェントン反応を用いた返流水処理法の導入による効果を実験的に検討した。 フェントン反応を用いた返流水処理の実験結果より、TOC濃度は実験開始とともに徐々に減少し、実験開始280分で初期TOC濃度の82.3%が無機化されたことを確認した。このことから、返流水中の難生分解性有機物質がフォトフェントン反応によって生成したOHラジカルにより、二酸化炭素にまで無機化されたことが分かる。 一方、BOD_5/TOC値は時間とともに徐々に上昇していった。このことから、全有機炭素における易生分解性有機物質の存在の割合が増加したことがわかる。フォトフェントン反応を用いることにより、難生分解性有機物質を易生分解性有機物質に変化できることが示唆された。 本プロセスにより、返流水中の難分解性有機物質を無機化または易生分解性有機物質に変換できることを確認した。残存した易生分解性有機物質は、後段の活性汚泥法により処理することができる。フォトフェントン反応による寄与を最小限にし、活性汚泥法を有効に使うことで、排水処理プロセスのランニングコストを削減できると考えられる。
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