研究概要 |
イネの種子は、登熟すると脱粒する性質(脱粒性)があり、種子の拡散により繁殖戦略に影響を与える植物の重要な性質である。脱粒性の喪失は、穀物の栽培化(野生種から作物としての種への進化現象)の過程で選抜の対象であり、収穫方法にも影響を与えることから、今日でも重要な農業形質の1つである。 申請者らは、これまでに、脱粒性遺伝子qSH1を単離し、qSH1遺伝子が離層形成に必須であることを明らかにしている(Konishi et al.,Science,2006)。論文発表後、脱粒性遺伝子qSH1の準同質遺伝子系統NIL(qSH1)を用いて、レーザーマイクロダイセクション法を利用した離層部位特異的なマイクロアレイ解析を行い、qSH1遺伝子の下流で働く候補遺伝子の探索を行い、遺伝学実験、相補性試験により、OSH15遺伝子が脱粒性に関与することを明らかにしている(小西ら、未発表データ)。 そこで、本研究では、OSH15遺伝子の機能解析および下流の候補遺伝子の組織特異性の発現解析を行った。また、qSH1遺伝子とOSH15遺伝子の遺伝学的材料、すなわち、脱粒性遺伝子qSH1とOSH15を両方ともに機能型に固定した実験材料NIL(qSH1)OSH15および、qSH1遺伝子は機能型でOSH15遺伝子は機能欠損型に固定した実験材料NIL(qSH1)osh15を用いて、経時的な離層部位のフロログルシノール染色やトルイジンブルー染色、UV照射による蛍光顕微鏡観察といった詳細な形態観察を行った。 その結果、qSH1遺伝子は、イネの脱粒性において初期のステップで、種子の基部の離層の形成に関与し、OSH15遺伝子は、初期のステップでは離層の形成に関与し、後期のステップには、離層の崩壊に関与していることが示唆された。
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