研究概要 |
本研究は、歯と同じ成分であるハイドロキシアパタイト(HA)を高速衝突付着現象(Powder Jet Deposition法)を利用して、虫歯治療の部位に直接再構築して、歯を治療するという全く新しい治療技術を実用化するものである。これまでの研究より,PJD法を応用し、歯質上に非常に均一で緊密であり,厚く幅広い面積のHA膜の生成に成功している.HA膜は非常に硬く,エナメル質と同程度であり,歯科診療で使用されるコンポジットレジンと同程度の強い接着強度を有している.今年度は、口腔内環境における膜特性の解明を行った。PJDによって成膜されたHA成膜層は、口腔内において唾液等に暴露されるため、口腔内環境を想定した条件で、HA成膜層の安定性について検討を行うこととした。なお、成膜層の安定性評価については、形態観察ならびに機械的強度等について評価を行なった。本検討においては、抜去歯を研磨し、HA膜を成膜して抜去歯をSBFに一定期間浸漬し、その後HA膜の分析を行なった。擬似体液には、ヒト血漿と無機成分の濃度を等しくした中性な溶液を用いた。なお、この擬似体液への浸漬による評価方法は、バイオマテリアルの評価として一般的に用いられている方法である。HA膜はエナメル質と象牙質に成膜された。象牙質においては,象牙細管に平行になるように成膜を行った。浸漬はバイオマテリアル研究で実績のある7日間行った。SBF浸漬後の電子顕微鏡写真において、成膜層上面にSBFに由来すると思われる石灰化物の沈着や、成膜層の溶解などの痕跡は見られず、安定した膜特性であることが確認された。今後EDX等によって膜の分析を行う。
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