研究概要 |
本研究は,心肺蘇生時の胸骨圧迫技術を実施したときの術者の負担と胸骨圧迫の質の変化を総合的に評価し,効果的な胸骨圧迫の要件を提案することを目的とした.本研究は,実験1(2010年実施)と実験2(2011年実施)から構成される.実験1は,術者が好むベッドの高さと人体計測値の関係を明らかにした.また、異なるベッドの高さや姿勢で胸骨圧迫を実施した時の術者の主観的評価を行うことで,効果的かつ負担の少ない姿勢や高さについて検討をした.その結果,術者が胸骨圧迫を実施しやすいと感じる高さは,胸骨を圧迫する位置の高さが,術者の大腿部の中心と同じ高さであることが明らかとなった.胸骨圧迫の正確性は,好みの高さでの実施,ベッドに膝をつく姿勢が有意に高かった.実験2は,臨床現場の心肺蘇生法に着目し,異なる姿勢およびベッドの高さで胸骨圧迫を実施した時の術者の生体負担及び胸骨圧迫の正確性を検討した.その結果,心肺蘇生法の基本である床での実施、術者が好む高さおよびベッドに膝をつく実施は,胸骨圧迫の正確性が高いことが明らかとなった.しかし、ベッドに膝をつく姿勢での実施は、床での実施より生体負担が有意に高いことが明らかとなった。したがって,効果的な胸骨圧迫の要件として,(1)ベッド上で胸骨圧迫を実施する際は,圧迫位置が大腿部の中心と同じ高さになるように高さを調整する,(2)患者の胸の横に膝をつき,足趾を接地した状態で胸骨圧迫を行う,以上の2点を提案する.
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