研究概要 |
本研究は,医薬品等の品質管理基準(Good Manufacturing Practice : GMP)を柱とした自己骨髄間葉系幹細胞移植による低侵襲性顎骨再生医療システムを開発し地域医療に適応し,先端細胞治療センター(CPC)を有さない一般病院がCPCを利用し幹細胞移植を行う標準業務手順書(SOP)を作成し臨床応用することを目的としている.平成22年度は,動物実験による顎骨再生シミュレーションとして日本白色ウサギの大腿骨部より骨髄液を採取し,3週間培養を行った.細胞増殖能,細胞形質の検討を行い,培養された細胞をβ-TCPと多血小板血漿にて混和しウサギの上顎洞へ移植し,骨形成状態を検討した.3週間の培養によってMSCは約2×10^6個に増加した.分化培地を添加して培養したMSCは骨芽細胞様細胞の形質を獲得し,アリザリンレッド染色陽性となり成熟骨芽細胞への分化能を示した.多血小板血漿と医薬品塩化カルシウムを混合して細胞の保持が可能なゲルが形成された.移植された組織を骨生検し,トルイジンブルー染色にて細胞移植部に著しい基質が観察され,アリザリンレッドではリン酸カルシウムの沈着が観察された.またSOPを作成するための基礎的実験を行い,細胞搬送条件の設定を行った.搬送には専用搬送容器を使用し、20~25℃でCPCへ搬送を行った.7名のドライランを実施し,15%自己血清添加α-MEMを用いて9mlの骨髄液から間葉系細胞を3週間の培養で約1×10^7個採取できた.細胞生存率をトリパンブルー染色にて算定し,培養生存率が90%以上であることが確認できた.細胞表面抗体の解析をフローサイトメトリーにて行った。マーカーには骨髄間葉系幹細胞のマーカーであるCD271, CD105, CD44を用いた.その結果、骨髄液中には約0.2%のCD271陽性細胞が存在し,この中でCD105・CD44double-positive細胞は約2%だった.一方,細胞回収時にはCD271陽性細胞は約4%に増加し,この中でCD105・CD44double-positive細胞は100%となった.ヒト骨髄液中には,CD271陽性のMSCが0.2%, CD44/CD105陽性のMSCは約2%存在することが明らかになった.
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