グリセリン浣腸実施による有害事象の報告が後を絶たない。その背景には、グリセリン浣腸実施に潜む危険要因について十分周知されていない現状がある。そこで本研究は、将来看護学生が臨床現場で安全な浣腸技術が提供できるために、浣腸技術に潜む様々な危険要因に関する知識が修得できるために教育プログラムを開発することを目的としている。本年度は、まず、日本看護協会からグリセリン浣腸に関する緊急安全情報が通達された2006年以降現在(2010年)までに報告されているグリセリン浣腸に関連した有害事象事例から文献検討を行った。医学中央雑誌Webのデータベースを用いて、キーワード「グリセリン浣腸」にて検索を行った結果、計110件の文献が抽出された。その中からグリセリン浣腸実施により有害事象を認めた事故事例の実態を含め、安全な浣腸実施に向けた見解に注目して今後分析を行う。また、教育プログラムの検討に関しては、基本的文献以外にも研究協力者から実験動物を用いた基礎研究データの情報提供を受け、カテーテルを挿入する際に盲目的な部位である直腸内部画像等の視覚教材を工夫し講義の中に取り入れたり、浣腸液の温度管理に関する実験演習を行った。実験演習方法は、内視鏡を用いた実験演習を当初計画していたが、既成の浣腸用シュミレータではリアリティーが乏しいため、今年度はディスポーザブルグリセリン浣腸器を湯煎し自分の温度感覚を頼りに適温と言われる約40度を判断した時、実際は何度であるのか放射温度計を用いて測定を行った。その結果、自分が判断した温度と実際の温度が一致せず温度調節の難しさを実体験すると同時に、グリセリン浣腸実施に潜む危険性について認識を高めることが出来た。浣腸技術に関してはエビデンスが不明確な部分があるため、その追求を行うと同時に、安全な技術が提供できる看護師育成のための教育プログラム開発を継続する必要がある。
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