研究概要 |
進行癌患者の予後改善のためには標準治療抵抗性の癌細胞を標的とした新たな治療手段の開発が望まれている。本研究は、癌の転移、再発や標準治療抵抗性獲得に関与する上皮間葉移行(EMT)を起こした癌細胞に特異的に発現する分子群(Snail, Slug, Twist)から日本人に最も多いHLA-A24に拘束性の癌抗原エピトープを同定することを目的とした。本年度には、以下の研究結果が得られた。1. EMT誘導、幹細胞様性格の獲得に関与する分子群(Snail, Slug, Twist)から、モチーフ検索(NetMHC3.2およびIEDB ANNを使用)によりHLA-A24に結合すると考えられるアミノ酸配列を計11種類選択し、ペプチドを合成した。2. HLA-A24陽性RMA-S細胞を用いて、合成したペプチド11種類のうち7種類のペプチドがHLA-A24へ結合することを確認した。3. HLA-A24陽性健常者の末梢血を、HLA-A24への結合能が確認された合成ペプチドを用いて刺激することにより、各ペプチドに特異的なCTLを誘導した。誘導したCTLを用いた機能解析(サイトカイン産生、51Cr遊離試験)を行い、HLA-A24拘束性のCTL抗原エピトープを3種類同定した。現在、上記手法にて同定されたHLA-A24結合ペプチドの免疫原性、ワクチンとしての有効性を、H-2Kd(HLA-A24と結合配列モチーフを共有するマウスMHC)を持つBalb/cマウスの移植腫瘍(4T1細胞)モデルで検討中である。本研究は臨床応用を視野に入れた研究であり、新しく同定した抗原エピトープのワクチンとしての有用性をマウスモデルで証明できれば、標準治療抵抗性の癌患者に新たな治療手段を提供できるものと期待される。
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