研究目的: 2007年のロシア政府によるロシア木材輸出税引上げ問題によって生じた中ロ木材貿易の先行き不透明感から、黒龍江省国有林への計画伐採枠内における木材生産への需要が高まる中、現場の伐採地及び労働者はどのような影響を受けているか調査を行った。 研究方法: 中国黒龍江省のスイリン県の林場(四海店林場、建興林場、三吉台林場、長山郷)にて伐採現場の視察と聞き取り調査を行った。 研究成果: 1998年の中国政府の天然林保護プログラムによる森林伐採制限により、黒龍江省の多くの森林伐採従事者が一時金をもらって職を失った。現在残った者は春季~秋季は林業局の森林防火の仕事につき、冬季は一部の者のみ計画伐採に従事し、他の者は中ロ木材貿易や木材加工業で職のある中ロ国境地域(綏芬河や満洲里等)やロシアに出稼ぎに行かざるを得ない状況であった。またスイリン市には比較的規模の大きなフリーボート工場がいくつかあるが、黒竜江省内の木材伐採量が制限されているため、伐採した木の根も全て回収しフリーボートの原料とする状態であり、木材需要が高まる中、天然林保護プログラムに見られる国の環境政策と経済的に厳しい地方政府のせめぎ合いの中で、計画伐採の上限量ぎりぎりまで伐採せざるを得ない林業地域の窮状を視察することができた。また伐採設備更新等も遅れており、スイリン県では戦前日本がこの地域に敷設した森林鉄道をそのまま使用しているが、線路の痛みが激しいため積雪でレールを滑らせることのできる冬季のみしか貨車を走らせることができない状態であった。このように伐採関係設備全般に老朽化が目立ち、森林伐採従事者の安全が確保されているとは言いがたい状況であった。
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