常温熱機関「水飲み鳥」について考察した。(1)内部温度の計測方法の検討(2)作動物質(塩化メチレン、ジエチルエーテル、フレオン11)の熱的特性のデータ収集、さらに作動物質としての水の利用について、考察を行った。(3)「水飲み鳥」の認識、製造の歴史を調査した。「トーマス・リー・バッキージョセフ・P・ブランク補筆小津次郎訳アインシュタイン-ある個人的な回想録-図書184号、1964年12月号」には「わたしの兄がアインシュタインに仕掛け玩具を贈ったことがある。それは、水を入れたコッブの縁に小鳥がとまっていて、水の中に頭を入れたり出したり、まるで永久運動のように動作をくりかえすのである。アインシュタインは坐って、この運動を起こさせる原理を発見しようとして、楽しそうに眺めていたが、原理は発見できなかった。」等の記述を確認したが、「日本人の発明になる水飲み鳥」との見解の検証はできなかった。ガモフは"熱機関の原理にもとづいた、日本の巧妙なオモチャ"、ペレリマンは「中国から伝わってきたおもちゃに、《水飲み鳥》とも言われているものがあります。」と紹介している。(4)台湾での製造現場の調査は、困難で、現在は中国で製造されていることがつかめた。日本での調査は「企業秘密」の壁がある。「孤独なライフワーク神山恵三(文藝春秋)」には「水飲み鳥の育ての親-アインシュタインを考えこませた水飲み鳥と平田棟雄氏オモチャの最高傑作」として「虎ノ門の特許庁に向かった。」「昭和二十四年五月三十日付けの初めての書類の上に、さらに何通もの書類が貼付されていた。」との実用新案の記述を確認。(5)日本の文献では、定量的説明は少なく、作動物質の「凝縮」の事実の検証も不十分である。(6)外国の論文では、研究の方向は定量的・理論的な追究も多いが、熱的なメカニズムの全体的な解明が不充分である。カルノーの理想的なサイクルではサイクルに必要な時間は無限大にかかるが、現存の熱機関の周期は有限であり、機械的なメカニズムが、熱的な動きを制限している。
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