バイオエタノールは糖類の発酵により生成できる。原料が植物であることから、石油などの地下資源と比べて再生可能であり、カーボンニュートラルであることから将来期待されるものである。このバイオエタノールから固体触媒反応により、燃料電池用水素の生成が出来れば、石油資源の枯渇や地球温暖化対策の一つになると考えられた。本研究では、触媒の微細構造等が変化することでその活性や生成物の選択性が向上することを期待し、触媒となる貴金属(白金)やニッケルの微粒子を調製する際に磁場を印加し焼成処理、還元処理を行う反応装置を製作した。市販の小型電磁石の極間に、研究代表者自身の独自技術により製作した小型電気炉を設置し、触媒調製を行った。このような反応装置は過去に例がなく独創的なものである。目的とした反応は、バイオエタノールの水蒸気改質反応で、モデル反応液として14wt%のエタノール水溶液を用い、気化させた後、触媒層に導入して反応を行った。実験の結果、磁場を印加して調製した触媒の活性は、印加していない触媒に比べて低いものとなった。透過型電子顕微鏡観察によれば、触媒の微粒子の形状については、従来の方法により調製した触媒とほとんど変わりないものであった。したがって、何らかの効果(負の効果ではあるが)は見出すことが出来たが、新たな課題も生じた結果となった。生成物の選択性は、従来の方法によって調製した触媒とほとんどかわりないことから、反応機構については、まずエタノールの脱水素が起こり、生成したアセトアルデヒドが分解する過程が考えられた。 成果の公表については、エタノールの水蒸気改質反応についてこれまでの研究結果を国際的な専門誌Catalysis Communicationsに投稿し、審査の結果、掲載された。また、平成22年12月に開催された「2010環太平洋国際化学会議(Pacifichem 2010)」において発表し、国内外の研究者とも意見交換を行った。また、筑波大学技術報告にも掲載された。
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