1、研究の目的 携帯電話による地震観測のデータ伝送を可能として、地理的制約を少なくする。大地震発生直後から本震に近い場所にオンラインの地震観測点を設置することが可能となり、重要な観測データを即時に解析可能になると期待される。また、ソーラーパネルによる太陽光発電を可能として、保守作業の負担を軽減する。大地震の発生により道路が寸断されて保守が実施できない場所において、メンテナンスフリーで長期間の地震観測が可能になると期待される。さらに、月額約6千円の定額制料金プランを利用可能として、低料金での連続観測を可能とする。また、複数の携帯電話網を利用可能として、通信エリアの拡大とアクセス回線の冗長化を図る。 2.研究の実績 2-1.携帯電話データ伝送システムの開発 組み込み用小型ボードコンピュータをベースとして、下記手順でデータ伝送装置を開発した。 (1)携帯電話データ通信モジュールのハードウェアを認識させるための改修を行う。 (2)リモートログインに必要なソフトウェア機能を追加する。 (3)データロガー内部の観測データをデータ収集サーバへ送信するプログラムを開発する。 (4)データ伝送装置と携帯電話アンテナの『屋外設置用ケース』を設計・製作する。 (5)DC 12Vの電源で駆動するための『外部変圧回路』を設計・製作する。 (6)鉛蓄電池とソーラーパネルを充放電コントローラに接続して、データ伝送装置とデータロガーに電源を供給して、屋外での連続観測を1ヶ月以上実施する。 (7)受信したパケットの時間帯別の欠落状況を調査して、データ伝送装置の設定を最適化する。 2-2.研究成果 連続観測のために常時接続を行っていると、一定時間が経過すると携帯電話会社によって通信を切断されることが分かっていた。そのため、約12時間に1回の頻度で再接続する必要がある。既製品の携帯電話対応ルータでは再接続に対応できなかった。本研究の臨時地震観測点用のデータ伝送装置では、タイマー機能を搭載することで再接続を自動化し、さらに商用電源に頼らないシステムとすることで、機動性を向上できた。
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