研究概要 |
【研究の目的】 本研究で着目する鍛造シミュレーションは,機械工業分野で積極的に活用されつつあるが,これまで本校で,このような進んだ技術を実験実習に取り入れる試みは,されていなかった.現行の鍛造実習は,座学の理解を補うものであるが,その内容は単なる自由鍛造の体験である.そこで新たにシミュレーション技術を取り入れた型鍛造に関する実験を導入し,学生が機械工作法の講義で学んだ鍛造に関する知識を確認し,理解を深められる内容とする.また,鍛造模型実験も合わせて導入し,それらを効果的に活用する方法を研究する. 【研究の方法】 1)古くから行われ,実績のある型鍛造の代替材(プラスティシン粘土+潤滑剤)を用いた模型実験を参考に,簡易的に行える模型実験を検討した. 2)本校において過去に実施された鍛造シミュレーションを用いた研究(宮澤ら,機論,C, vol.68 [674], pp.242-247)において,シミュレーションの有効性の検証がなされてきた.それらの研究成果を参考にし,実際に鍛造加工を行うことなく,パラメータを変えるだけで,容易に種々の検証を行えるシミュレーション技術のメリットを生かす実験内容となるよう,検討した. 3)日本塑性加工学会主催,第116回塑性加工学講座「鍛造CAEの基礎と活用事例」に参加し,得られた関連知識を,教材開発に生かした. 4)本研究による取り組み内容を,機器分析技術研究会ならびに総合技術研究会で口頭発表し,質疑応答の中で得られた知見を教材開発に生かした. 【研究の成果】 1)卓上プレス機,透明アクリル治具で構成する模型実験装置を製作した.金属とは物性値は違うものの,粘土と潤滑油を用いた模型実験により,鍛流線を視覚的に確認し,鍛造現象を簡易に体験できるものである.2)鍛造シミュレーションソフトウェアの操作手順を示したマニュアルを作成した.座屈を生じさせるような直径より十分長い材料の鍛造を対象にして,パラメトリックスタディを行い,鍛造メカニズムの理解を深めるものである. これら模型実験装置および鍛造シミュレーションパラメトリックスタディ教材は,平成23年度後期4年工学実験の一テーマである「生産」の教材として活用する.
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