研究概要 |
1)定在波音響管内の現象には,レイリー型音響流,ドボルザークの噴水,クントの微粒子縞の生成など物理的に興味ある音響現象が多い。音響流については理論,実験の両面でほぼ解明されつつある。 2)しかし,管内での微粒子縞の成因については決め手がないと思える。そこで,微粒子の異粒径粉体を定在音波中に置いたところ,粒子速度の違いによる集合・分散現象を認めた。大粒径粒子は粒子速度の腹の位置に集合し,腹から節に向かい,小粒径粒子が順次集合した。このことは気体中での異粒径粒子の分別に応用できる。 3)次に,笹川民雄氏の論文;「物理教育」57(2009)p.201にある縞の高調波成因説を確かめるため,矩形音響管壁振動の寄与抑制として,管を強固に固定し,波形をFFTしたが,卓越した高調波は確認できなかった。 4)集合・分散の原因を高調波とすると,縞の微細構造間隔から超音波領域の波長であるため,28kHzと40kHzの超音波振動子で定在波音発生させ,微粒子縞を観察したところ,可聴音波波長の10分の1の0.5mm程度の微粒子縞が粒子速度の腹の両側にできたが,約10倍の高調波超音波観測できなかった。この時,開口端での空気の流速は風速計で約5cm/sであった。管内の風速は管径が小さいため,プローブを挿入できず,不明である。 5)管内空気の代わりにヘリウム気体を満たしたところ,微粒子縞の微細構造の間隔は数倍に拡がった。 6)従来,微粒子縞は共鳴時に生じるとされて来たが,ワラのような円筒形の物体では非共鳴時でも縞状に1段1段積層した。共鳴周波数から数10%変化させてもワラは積層を続けた。 7)非共鳴時で,ワラの場合,数段の積層壁の間隔は微粒子の微細構造間隔よりも数倍大きくなった。この時,波形をFFTしても基本波より大きい振幅の高調波は見当たらず,高調波放射圧説をさらに検討する必要がある。 以上の研究は主に電気通信大学鎌倉研究室の指導協力を得て行った。研究成果のトピックは6)の実験結果から,クント縞は流体力学的作用により生ずると考えられ,音波共鳴は微粒子縞の成因に本質的ではないことを発見したことである。共鳴はエネルギーを集中させる効果と推測する。これらの結果はドボルザーク(Dvorak)の噴水現象をよく説明でき,アンドレード(Andrade)の実験で示した渦説を支持する。今後は微粒子の集合・分散現象の解明のため,流体・粉体力学的観点から微粒子縞をモデル化し,数値計算で確かめる必要がある。
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