環境化学の実験教材の開発を目的とし、液体である硫酸と同じ触媒効果をもつ固体酸触媒の合成及び諸条件の検討を行った。固体酸触媒は、糖類や炭水化物・セルロースなどの天然有機物を加熱して中途半端に炭化されたカーボンのシートをつくり、発煙硫酸や濃硫酸でスルホン化し、シートの縁にスルホ基を付けることで合成した。合成条件として、窒素雰囲気中で原料を300~500℃で10~30分間加熱し、冷却後、発煙硫酸又は濃硫酸を加え80℃~150℃で1時間加熱した。合成した固体酸触媒の性能は、高校化学の必須項目の反応である、酢酸とエタノールから酢酸エチルを合成するエステル化反応における触媒活性を比較することで評価した。ショ糖などの糖類はいったん液化するため原料が自然に攪拌され、時間も短時間で比較的均質なシートが合成されたが、デンプンなどの粉末や紙などは加熱にむらが生じ不均質だった。また、原料の加熱温度が低い、加熱時間が短いなど熱処理が不十分だと、スルホン化の段階で低分子量の芳香族スルホン酸となって固体酸とならず溶解した。最もエステル化の触媒性能が優れていたのは、ショ糖を試料とし、加熱温度400℃、10分加熱したもので、エタノールと氷酢酸1:1の溶液10mLに触媒として固体酸2gを加えたものでは、触媒として濃硫酸1mL加えたものとほぼ同量の酢酸エチルが得られた。500℃以上の高温で焼かれている市販の活性炭や木炭でも同様の処理を行い、エステル化を試みたが触媒能は低かった。固体酸を一度使用するとスルホン酸基の脱離が起こり、ろ過後再使用したときの酢酸エチルの収量は1/10程度に減少した。触媒能の低下を防ぐ一案として、スルホン化後に高温高圧で水処理することでスルホン酸基の脱離を抑制できることが確認できたので、更に諸条件を検討して再使用に関する問題点を解決し、実施可能な教材となるようにしたい。
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