乾燥は、食品および医薬品の保存・運搬・貯蔵に欠かせない技術であり、新食品開発の面でも重要なプロセスである。現在の製品製造においては、熱に不安定な物質も加工でき、安定で外観の良い製品製造を可能とする凍結乾燥法が主に行われているが、その機構は十分に解明されていない。また、プロセス解析のための装置は市販されておらず、自作せざるを得ないが、その作製は簡単ではない上、目的データを取得することも容易ではない。食品製造プロセスを解析および学習する(乾燥時の製品の物性の時間変化を連続的に測定する)ことは、現存の装置・実験方法では非常に難しい。 現在の製品製造での問題点を解決し、効率的かつ安価で最適な乾燥プロセスを開発することを目的として、食品乾燥実験を行った。乾燥試料として酵素・微生物・食品を用い、乾燥法の改良としては糖添加などの乾燥前処理を行い、その乾燥挙動・水分拡散の点から乾燥を評価した。乾燥方法(熱風乾燥法、凍結乾燥法、真空乾燥法など)による比較も行い、その差(乾燥速度、乾燥機構、外観変化、乾燥前処理の影響など)について検討した。また、熱電対の設置された試料皿を用いることで、試料温度の経時変化をデータロガーにより連続計測した。これを重量変化により算出した含水率変化のデータと比較することにより、酵母や乳酸菌等の試料において一次乾燥期間と二次乾燥期間を区別することが可能となったが、凍結乾燥装置への応用については機密性の問題など、まだ課題を抱えている。 さらに、試料として水を用いて乾燥時にビデオ撮影を行い、昇華面の移動速度から乾燥速度を決定することができると考えたが、計測時に一次乾燥期間において試料は多孔質化し、昇華面が平面とならず、その移動を計測することが非常に困難であり、今後は撮影方法および解析パラメーターの更なる検討を行う必要があると考えられる。
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