沖縄工業高等専門学校に隣接する沖縄県北部、名護市東海岸の辺野古・大浦湾周辺をモデル地域として、沿岸の植物と海藻類を網羅するスキャナ画像によるフロラの記録と生態写真を併せたデータベースの構築作業を進めた。 本年度は(1)野外での撮影・採集からスキャナによる画像の記録、データベースへの登録及び標本の保存までの一連の作業の規格化と(2)データベースソフト「ファイルメーカー」をもちいたデータベースシステムの構築をほぼ完成させた。また(3)実際の沿岸植物の生態写真の撮影、標本の採集とスキャンデータの収集、及び(4)これらのデータを含むデータベースのインターネット上での公開準備を進めた。当初予定していた沿岸域の植物に加え、大浦湾にそそぎこむ河川の集水域全体の植物相も対象としてデータを収集している。植物データの収集は開花時期などの問題もあり、現在までのところでは地域内を網羅するには至っていないが、今後も継続して収集を続ける予定である。 これまでの成果は学会等で発表しているほか、本研究により得られた植物や藻類のスキャン画像は地元の自然写真展や講演会、海外の学生向け環境学習テキスト、他分野の研究発表にも活用された。また本研究の技術を用いて、地元市民向け公開講座や新たな自然学習テキストの製作が計画されている。スキャノグラフという生物の新しい記録手段と今回構築したデータベースは、今後も地元市民の自然への理解が深めるためにさまざまな場面で活用されることが期待される。
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