研究概要 |
近年、モルヒネなどの鎮痛薬に抵抗性を示す神経障害性疼痛の新たなメカニズムとしてP2X_4受容体の発現亢進が注目されてきている。現在臨床使用可能なP2X_4受容体拮抗薬として塩酸パロキセチンがある。これまでにその臨床効果と血中濃度の関係を調査した報告はない。パロキセチンの血中濃度は個体差が大きく、効果的な使用法については情報が限られている。パロキセチンの安全で有効な使用のためにも、その効果・副作用と血中濃度の関係を明らかにする必要があると考えられ、本研究を計画するに至った。 今年度、緩和ケアチームが関わった症例で、新規にパロキセチンが投与開始され、研究同意が得られた症例は1例であった。症例は60歳代女性、右骨盤腫瘍による難治性創部感染後の半裁術後に出現した神経障害性疼痛(幻肢痛)に対し、NSAIDs、オキシコドン製剤、および鎮痛補助薬としてカルバマゼピンが投与されていた。しかし、疼痛コントロール不良のため緩和ケアチームに疼痛コントロールの依頼が有り、パロキセチンが投与開始となった。パロキセチンは10mgな日から開始し、30mgな日まで増量後、オピオイド鎮痛薬の頓用回数および患者の自覚症状は改善を認め、パロキセチンの幻肢痛に対する鎮痛効果が示唆された。パロキセチンの血中濃度に関しては20mg/日と30mg/日に増量後5日以降の定常状態に達している血中濃度のサンプルを採取し冷凍保存しており、購入したカラムおよび試薬を用いてMalfaraらの報告(Malfara WR et al., J Pharm Biomed Anal. 2007)に基づき、今後測定予定である。
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