【本年度の研究の成果】 本年度は、研究計画に基づいてテイコプラニン(TEIC)の投与設計におけるsCys-Cの有用性を検討した。はじめに、予備研究としてTEICの初期投与設計に影響を及ぼす要因の解析をレトルスペクティブニに検討した。 【方法】対象は2007-2010年に当院高度救命救急センターに入室した患者で、TEICの初期投与設計を行った患者とした。要因解析はロジスティック回帰分析によって行った。 【結果】対象患者は、平均年齢67.9歳(23-88歳)、男性31例、女性12例の計43例であった。予測値と実測値が30%以上乖離した症例は18例(41.8%)であり、その平均トラフ値は12.5μg/mLと目標トラフ値(>15μg/mL)をしたまわっていた。一方、乖離しなかった群は平均トラフ値が20.4μg/mLと目標トラフ値(>15μg/mL)に到達していた。 次に、予測値と実測値が30%乖離する要因について、アルブミン、クレアチニンクリアランス、輸液量、血液浄化療法施行の有無、SOFAスコアの項目に関して単変量解析により追求した。その結果、SOFAスjコアが要因として見出された[オッズ比7.33(1.605-33.51)、p<0.01]。一方、腎機能の指標であるクレアチニンクリアランスは要因として見出されなかった[オッズ比2.13(0.609-7.409)、p=0.237]。以上の結果から、TEICの初期投与設計には腎機能は重要な用量決定因子とならない可能性が示唆された。これらの結果は、第58回日本化学療法学会西日本支部に発表した。 【今後の研究計画】 本年度の研究成果より、TEICの維持量の決定におけるsCys-Cの有効性を検討していくこととする。sCys-Cの測定キットは本科研費により購入することができており、速やかに研究に着手する予定である。
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