研究概要 |
フェンタニル(以下、FP)は癌性疼痛治療で用いられている医療用麻薬であり、本邦では徐放性FP貼付剤と注射剤のみが使用されており、即効性FP口腔粘膜吸収製剤が上市される予定である。FP貼付剤に対するレスキュー使用方法の現状は、モルヒネ,オキシコドン等の即効性製剤が使用されているが、その選択や投与量に明確な基準はない。今後,即効性FP製剤の登場によりFP貼付剤に対するレスキューの方法が大きく変化することが予測される。本研究では、2009年5月-2010年5月までにFP貼付剤を使用した癌患者を対象に、レスキューの使用方法や使用量、除痛効果について調査・解析を行い、即効性FP製剤を使用する際の問題点を予測・考察することを目的とした。FP貼付剤使用患者は186人で、レスキューは78%の患者で処方されていた。レスキューの推奨用量(1日量の1/6用量)を満たしている処方は、経口オキシコドンで46%、経口モルヒネで40%、坐薬では100%であった。レスキューの使用回数は、経口オキシコドン、経口モルヒネでそれぞれ平均2.5回、2.2回であった。またレスキューを使用することで約84%の患者で自制内の除痛効果が得られていたが、レスキューの用量と除痛効果にはバラツキが見られた。今回の調査からオピオイドの違いによるレスキューの使用回数や用量には大きな差が見られなかった。しかしその除痛効果にはバラツキが見られた。FP貼付剤は皮膚状態によって吸収過程に個人差が大きく、除痛効果も個体間で不安定であり、このことが用量と除痛効果のバラツキに影響している可能性が考えられた。癌患者の多くは抗がん剤による口腔粘膜障害を呈しており、このような患者への即効性FP製剤の使用は薬剤吸収が不安定となる可能性が危惧される。即効性FP製剤についても吸収の個人差を明らかにすると共に、用量設定に注意が必要になるものと考えられる。
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