【目的】腰痛ガイドラインでは、治療者の対応(指導、共感、励まし)などが、治療成績や満足度を向上させるというエビデンスがある。しかし、腰痛患者の健康や疾病に対する考え方、理解度、性格などが治療の効果を左右する可能性があり、腰痛患者の信念体系を把握した上での対応が求められている。また、慢性腰痛患者が健康や疾病に対してどのような信念体系を持っているかということを知るには、その患者個人にあった介入を実施するためにも重要なことと考える。 今回、慢性腰痛患者の健康統制感と身体所見との関係を調査し、心身健康科学からみた慢性腰痛患者の特徴と介入後の変化について検討した。 【対象と方法】慢性腰痛と診断された49例を対象とした。評価法は、健康統制感尺度(JHLC)と患者立脚型慢性腰痛症患者機能評価尺度(JLEQ)と不安評価尺度(STAI)とVASと身体所見との関係を調査した。介入は、(1)セルフケア、(2)患者教育、(3)鍼灸治療(4)カレンダーを用いて、課題が出来たら印をつけてもらった。調査は介入前・介入後1・2・3ヶ月時のJHLCの推移と、それぞれの指標との関連について検討した。 【結果および考察】初診時と3ヵ月後の各指標の変化は次のとおりであった. (1)腰痛を表すVASは初診時54.6±13.1が3ヶ月には34.5±15.3と有意に改善していた。 (2)JLEQ(腰痛QOL尺度)は78.9±18.5が67.3±17.3と有意に改善していた。 (3)STAI(特性不安)は36.3±7.5が31.9±8.3と有意に低下していた。 (4)JHLCは5つの下位尺度(Internal、Professional、Family、Chance、Supernatural)の中で、は内在的統制(internal)の尺度のみが有意に増加した。 (5)VASの初診時と介入3ヶ月時の変化量を基準変数とした重回帰分析の結果では、QOL、STAI、身体所見変化量の寄与率が強く、JHLCの項目では、Professionalの変化量に寄与率が強い傾向であった。 以上の結果より、自分の健康をコントロールできるのは自分自身であるという内在的統制(internal)が高い患者、またはinternalを高めること。外在的の因子では医療従事者(Professional)の関わりが、より効率的な保健行動向上の可能性が示唆された。
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