赤血球不規則抗体の発現頻度と種類について、赤血球抗原の発現頻度や免疫原性を基礎にして、輸血治療歴や妊娠歴、地域差、施設の輸血状況の違いに関してこれまでまとまったデータは1970年代の遠山らの報告以来ない。検査法に関しては信頼性の高い調査結果が得られるようになっている。また、最近の社会や輸血をとりまく環境の変化により、これらの結果も変化してきていると考えられる。方法として、施設の輸血規模に関する調査として施設のベッド数、赤血球輸血量、血小板輸血量、新鮮凍結血漿輸注量、血液型判定検査件数、交差試験検査件数、不規則抗体検査件数、赤血球の同種血の供給状況等、調査する。不規則抗体のスクリーニングと同定に使用される方法および試薬の調査を行った。不規則抗体スクリーニング検査症例数に対する陽性症例数を調査し、陽性症例については種類を調査した。性別、輸血治療歴の有無、妊娠の有無、地域による発現頻度と種類を算出する。国内29施設において不規則抗体の発現頻度と種類について事前調査を行ったが、この結果、不規則抗体陽性症例における抗D抗体の比率の減少が認められた。抗-D抗体は女性に高頻度に認め(p<0.01)、男性/女性0.6/2.4(%)であった。抗-E抗体は輸血歴のある症例で2.3倍に増加していた。抗-Di^a抗体は日本では1.5倍多く認められた。採用されている赤血球パネルに関しては差を認めなかった。さらに登録施設を募り、地域差を含めた検討が進行中である。血液センターの集約化によって、地方では血液製剤の供給時間の延長が問題となっており、緊急輸血でも交差適合試験を省略する場合が増える可能性がある。以上から、不規則抗体の情報は、今後もますます重要であると考える。
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