研究概要 |
東大病院こころの発達診療部で受療中のPDD幼児56名(M,F=45,11平均4歳8ヵ月)を対象に集団療育と個別療育を順次6ヵ月ずつ実施し、その前後で表象水準(LDT-R)、KIDS乳幼児発達スケール、SM社会生活能力検査、異常行動(改訂行動質問票)の測定資料に基づいて発達的変化、介入効果を検討した。年齢(年少群=5歳未満、年長群=5歳以上)及び表象水準(低群=表象機能が認められない、高群=表象機能が認められる)で群分けした。 I横断比較 (1)言語コミュニケーション・概念・社会性は表象水準と強く関連し、年齢との関連は認められず、運動・作業領域は年齢と強く関連し、表象水準との関連は認められなかった。しつけ・身辺自立・自己統制は、年齢・表象水準の両方と関連していた。 (2)年長群では発達領域間の不均衡が顕著。表象低群では運動領域の高さに比し、言語・対人領域の低さが目立ち、表象高群では言語理解の高さに比し、言語表出・集団参加・対子ども社会性の低さが目立つ。異常行動(自傷・他害・睡眠障害)は年齢・表象水準との関連は示唆されなかった。 II介入効果・縦断比較 年少-表象低群:表象水準の有意な向上は個別療育前後で、運動・操作・対こども領域の向上は集団療育前後で認められた。対こども・対大人社会性の維持が課題。 年長-表象低群:操作・作業・移動や身辺自立の領域で向上を認めた。言語・概念・対人・意志交換領域での伸びにくさが課題。 年少-表象高群:言語・概念領域、対人関係・コミュニケーション、運動領域で顕著な向上を認めた。自己統制領域の有意な向上を個別療育前後で認めた。対こども社会性領域での伸びにくさが課題。 年長-表象高群:複数領域で向上。特に、概念と認知発達の有意な向上を集団療育前後で認めた。移動領域の伸びにくさが課題。 本人側の要因・環境要因から整理し、一人ひとりのPDD児の障害特性・発達特性・発達的ニーズを抽出した。それに適合したプログラム化が容易であった。
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