病理解剖前の死亡時画像診断にいかなる有用性があるかについて以下2つの方法により検討した。 (1)、病理解剖施行症例について死亡直前(3日以内)に撮影されたX線CT画像、および臨床検査データを比較し検討した。X線CT画像にて体内の肉眼的レベルにおける占拠性病変を指摘することは可能であり、これら画像診断単独で死因を特定できる場合は血管性イベントによる出血死の診断には有用と判断された。死亡時画像診断は出血性病変に限っては、解剖前のガイド的役割として有用であると考えられた。しかし、出血性病変が指摘可能であっても、当該病変の原因がミクロレベルのイベントによる場合は推定の域を超えないことも死亡時画像診断の限界と考えられた。また、空気塞栓の診断は病理解剖では見逃されやすく、X線CT検査による診断が特に有用であった。それゆえ、空気塞栓を疑う場合には解剖前死亡時画像診断が必要である事を指摘したい。 (2)、来院時心肺停止症例においてX線CT検査が施行された症例について検討したところ、心臓・肺・脳に出血などの占拠性病変があった場合に確実に診断が可能であり、逆に体内に占拠性病変がなく、その他の臨床データからも死因を特定できる異常が指摘されない場合には、臨床的に致死性不整脈と診断され、病理解剖まで至らない症例も多く存在していた。 X線CTによる死亡時画像診断は解剖前または解剖の承諾が得られない症例に関しては死因の特定の一資料として有用であることが指摘できる。 研究過程において、X線CT検査にて出血性ショック症例における脾臓の萎縮がみとめられる、新知見を得たので、エビデンスの確立目的で研究を遂行した。まず、死亡症例の死因別に出血性ショック症例とその他の症例について脾臓の体積を用手的トレースにて比較し統計解析したところ特に有意な差がある事が証明された。そこで、出血性ショック時と離脱後の脾臓の体積を比較すべく出血ショック時と寛解時の2点における脾臓の体積を比較し統計解析を行ったところ、やはり特に有意な差があることが判明し、脾臓の萎縮が指摘された場合は出血性ショックのエビデンスとなることがわかったことを報告する。
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