• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

海底出土複合遺物の保存・展示・活用に関する総合的研究

研究課題

研究課題/領域番号 22H00023
研究種目

基盤研究(A)

配分区分補助金
応募区分一般
審査区分 中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
研究機関奈良大学

研究代表者

今津 節生  奈良大学, その他部局等, 学長 (50250379)

研究分担者 池田 栄史  國學院大學, 研究開発推進機構, 教授 (40150627)
伊藤 幸司  東北芸術工科大学, 文化財保存修復研究センター, 教授 (50344354)
比佐 陽一郎  奈良大学, 文学部, 教授 (50839264)
木村 淳  東海大学, 人文学部, 准教授 (80758003)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2025年度)
配分額 *注記
40,300千円 (直接経費: 31,000千円、間接経費: 9,300千円)
2025年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2024年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2023年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2022年度: 13,260千円 (直接経費: 10,200千円、間接経費: 3,060千円)
キーワード海底出土遺物 / 3Dデータの活用 / トレハロース / X線CTスキャナ / 文化財学 / モンゴル帝国 / 元寇 / X線CT / 木材と金属の複合遺物 / 保存・活用
研究開始時の研究の概要

元寇の終焉の地である鷹島海底遺跡から発見された木材と金属から構成される複合遺物を研究対象に、環境負荷の少ない安全な材料を用いた保存方法の開発を進める。トレハロースを用いて国際的に顕在化している海底出土遺物の保存における深刻な問題を解決できる。また、錆と泥で覆われた海底出土遺物の形状や構造を解明するために、X線CTによる三次元画像解析と3Dプリンタによるデジタル複製品を用いて市民に分かり易く展示する方法を探る。さらに、モンゴル軍(モンゴル・南宋・高麗)が使った武器の用途を研究するために、X線CTの三次元画像解析で得たデジタル情報を用いて、国際共同研究と実物検証を行いながら「元寇」の実像にせまる。

研究実績の概要

モンゴル軍の日本侵攻の終焉の地である鷹島海底遺跡から発見された沈没船の部材など木材と金属から構成される複合遺物を対象として、海底出土遺物の保存および展示・活用に関する国際的な課題解決を目指して研究を進めている。
先ず、トレハロースを用いた保存方法の開発を進めた。トレハロースは耐湿性能や酸化防止性能に優れている。そこで、国際的に顕在化している海底出土遺物の保存における深刻な問題を解決するために、トレハロースを用いた保存方法の開発と国際的な共同研究を進めた。トレハロースの耐湿性能や酸化防止性能に着目して、各国から共同研究の依頼が来ている。先ず、UNESCOが主催する水中文化遺産セミナーをカンボジア国シュムリアップで開催した。ASEAN諸国10カ国の研究者に、トレハロースを用いた保存法の効果を紹介すると共に、各国研究機関との情報交換や共同研究を開始した。
次に、錆と泥で覆われた海底出土遺物の形状や構造を解明するために、X線CTによる三次元画像解析と3Dプリンタによるデジタル複製品を用いて市民に分かり易く展示する方法を探った。モンゴル軍(モンゴル・南宋・高麗)が使った武器の用途を研究するために、X線CTの三次元画像解析で得たデジタル情報を用いて国際共同研究を行い「元寇」の実像にせまった。モンゴル国立文化遺産センターとジンギスカン博物館の研究員を招聘して遺物とX線CT画像を観察しながら共同研究を実施した。
さらに、海底出土の金属と木材の複合遺物の実例として、鷹島海底沖出土遺物の調査研究に加えて、和歌山県串本沖に沈んだトルコ軍艦エルトゥールル号出土遺物について、トルコの調査団が引き上げた金属と木材の複合遺物について、X線CTによる三次元画像解析を実施すると共に遺物の状態調査と保存処理を実施することにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

トレハロースを用いた保存方法の開発と国際的な共同研究を進めた。UNESCOが主催する水中文化遺産セミナーをカンボジア国シュムリアップで開催した。2023年10月25日から28日まで、カンボジア・シエムレアプで開催された地域ワークショップ「東南アジアにおける緊急時への備えと水中文化遺産(Emergency Preparedness and Underwater Cultural Heritage in Southeast Asia)に参加してトレハロースを用いた保存法のワークショップを開催した。本会はユネスコ主催・カンボジア文化芸術省協力の下で開催され、ASEANを中心とした10ヵ国から、各国において水中文化遺産関連部門もしくは文化財保存修復部門等を中心に所属する約60名が参加した。研究代表者の今津節生(奈良大学)、分担者の伊藤幸司(東北芸術工科大学)に加えて共同研究者のアンドラス・モルゴス(ハンガリー)が講師を務めた。トレハロースは湿度に強く、溶液の再利用ができることや高価な専門機器や設備を要しないことから、高温多湿かつ開発途上地域の多い東南アジアにおいても持続可能性の高い最適手法だと期待が寄せられている。また、世界で初めて量産化を実現したのが日本企業であり、日本国内で生産されたトレハロースに対する評価と信頼も高い。日本は30年以上をかけて蓄積された知見と経験を有しており、国際的にも顕著な実績と捉えることができる。
さらに、海底出土の金属と木材の複合遺物の実例として、和歌山県串本沖に沈んだトルコ軍艦エルトゥールル号出土遺物について保存処理を実施することにした。発掘調査のために来日中の調査団長のトゥファン・トゥランリ博士と和歌山県串本長で協議した後、遺物を管理している串本町の許可を得て、エルトゥールル号調査団が引き上げた金属と木材の複合遺物について、X線CTによる三次元画像解析を実施すると共に遺物の保存処理を実施することに合意して記者発表を行った。

今後の研究の推進方策

今年は、モンゴル帝国と高麗の連合軍が襲来した1274年の「文永の役」から750年目にあたるので日蒙両国で共同研究や展示会の機運が高まっている。そこで、モンゴル軍(モンゴル・南宋 ・高麗)が使った武器の用途を解明するために、モンゴル国の研究者を招聘して共同研究を実施する。錆と泥で覆われた海底出土遺物の形状や構造を解明するために、X線CTによる三次元画像解析と3Dプリンタによるデジタル複製品を用いて市民に分かり易く展示する方法を探る。モンゴル国立文化遺産センターとジンギスカン博物館の研究員を招聘して遺物とX線CT画像を観察しながら共同研究を実施する。これまでの研究成果を、研究分担者の池田が主催する國學院大學『蒙古襲来750年』で展示すると共にモンゴル国の共同研究者が講演を行う予定で準備を進めている。
昨年、カンボジア国シュムリアップで開催したUNESCO主催の水中文化遺産セミナーを契機として、9月にマレーシアの研究者2名に対してトレハロース含浸法の研修を実施する準備を進めている。さらに、12月にはASEAN諸国だけでなく世界的な研究の拡大を視野に、オーストラリアでトレハロース含浸法の国際セミナーを開催する予定で準備を進めている。西オーストラリア博物館を会場に、オーストラリア、ニュージーランド各国の研究者との共同研究を開始する予定である。特にオーストラリアでは、トレハロースを使った海底出土の木材と金属の複合遺物の保存に関心が高まっており、今後アジア・オセアニア地域へのトレハロース含浸法の普及の可能性が高まっている。トルコ軍艦エルトゥールル号出土遺物について保存処理を実施する。X線CTによる三次元画像解析を実施すると共にトレハロースを用いて遺物の保存処理を実施する。また、トゥファン・トゥランリ博士を迎えて、高校生・大学生などの若い世代を対象とした保存処理セミナーを計画している。

報告書

(3件)
  • 2023 実績報告書
  • 2022 審査結果の所見   実績報告書
  • 研究成果

    (17件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 5件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [雑誌論文] ffectiveness of trehalose impregnation treatment methods on excavated objects from underwater sites: conservation techniques for the bulkhead plates of Mongolian shipwrecks2023

    • 著者名/発表者名
      Kouji Ito, Yumi Yasuki, Akira Kobayashi, Yoshifumi Ikeda, Setsuo Imazu,
    • 雑誌名

      2023International Symposium on Conservation of Esst Asian Cultural Heritage in Sapporo

      巻: 1 ページ: 93-98

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [雑誌論文] 糖類で保存処理した文化財への生物劣化の懸念2023

    • 著者名/発表者名
      今津節生
    • 雑誌名

      文化財の虫菌害

      巻: 86 ページ: 1-1

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [雑誌論文] 硫黄・水銀・鉛の三元素同位体分析を組み合わせた桜井茶臼山古墳出土朱の産地推定2023

    • 著者名/発表者名
      南武志、高橋和也、今津節生
    • 雑誌名

      桜井茶臼山古墳の研究

      巻: 1 ページ: 213-218

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [雑誌論文] Conservation treatment of Mongolian ships using the trehalose method2023

    • 著者名/発表者名
      Kouji Ito1,Yumi Yasuki, Toshiya Matsui, Akiko Miyake, Setsuo Imazu
    • 雑誌名

      ICOM-CC Wet Organic Archaeological Materials Working Group Change of venue for the 15th WOAM Interim Meeting

      巻: 1 ページ: 1-10

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 奈良で学ぶ 橿原考古学研究所長&奈良大学学長対談2022

    • 著者名/発表者名
      青柳規、今津節生
    • 雑誌名

      月刊ならら

      巻: 290 ページ: 4-16

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [雑誌論文] X線CTスキャナを用いた螺鈿紫檀五絃琵琶の健康診断と構造解析2022

    • 著者名/発表者名
      今津節生
    • 雑誌名

      正倉院宝物の研究 螺鈿紫檀五絃琵琶

      巻: 1 ページ: 68-85

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [雑誌論文] 保存科学を学ぶ人に実践して欲しい三つの習慣2022

    • 著者名/発表者名
      今津節生
    • 雑誌名

      文化財保存修復学会『通信』

      巻: 175 ページ: 1-6

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] 虫損を受けたマキリ(小刀)鞘の保存・活用にむけた三次元情報の整備2023

    • 著者名/発表者名
      杉山智昭, 北澤珠璃花, 後藤瑞希, 篠原志織, 湯澤香奈, 渡邉廉, 長田佳宏, 鳥越俊行, 今津節生
    • 学会等名
      日本文化財科学会第40周年記念大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 古代北東アジアにおける鉛系顔料の使用についての調査 -モンゴル草原出土遺物を中心に2023

    • 著者名/発表者名
      柳成煜・オドフアンガラグスレン・成瀬正和・今津節生・メンドバザルオユントルガ
    • 学会等名
      2023東アジア文化遺産国際シンポジウムin札幌
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] The remains of the end of the Mongolian invasion Excavation, Conservation, and International Cooperation of Takashima Underwater Remains2023

    • 著者名/発表者名
      Setsuo IMAZU
    • 学会等名
      nternational Symposium on Localization and Globalization of Heritage Studies, UNESCO Chair on Living Heritage and Community Development
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Development of Trehalose Method and International Cooperation2023

    • 著者名/発表者名
      Setsuo IMAZU
    • 学会等名
      Workshop on Emergency Preparedness and Underwater Cultural Heritage in Southeast Asia
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 元寇沈没船の保存と劣化に挑むトレハロースの効果2023

    • 著者名/発表者名
      今津節生
    • 学会等名
      第71回スガウェザリング学術講演会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 文化財保存修復学会90周年/日本文化財科学会40周年記念対談「文化財研究の未来」2023

    • 著者名/発表者名
      本田光子・今津節生
    • 学会等名
      文化財保存修復学会第45回大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] モンゴル国・突厥時代ザーマル古墳出土木製遺物の彩色顔料に関する調査2022

    • 著者名/発表者名
      柳成煜、今津節生、成瀬正和、デ・ウランチメグ、オユントルガ・メンドバザル
    • 学会等名
      日本文化財科学会第39回大会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] モンゴル帝国と日本の戦いが終わった場所 鷹島海底遺跡の発掘と保存2022

    • 著者名/発表者名
      今津節生
    • 学会等名
      モンゴル国立文化遺産センター
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 3Dプリンターを用いた脱活乾漆像の塑土原型の再現2022

    • 著者名/発表者名
      今津節生、山崎隆之、清水宏至、加藤沙弥
    • 学会等名
      文化財保存修復学会
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会・シンポジウム開催] UNESCO Chair on Living Heritage and Community Development2023

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書

URL: 

公開日: 2022-04-19   更新日: 2025-06-20  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi