研究課題/領域番号 |
22H00028
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
谷川 亘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (70435840)
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研究分担者 |
山本 裕二 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (00452699)
山崎 新太郎 京都大学, 防災研究所, 准教授 (40584602)
井尻 暁 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (70374212)
佐々木 蘭貞 帝京大学, 付置研究所, 准教授 (70755785)
木村 淳 東海大学, 人文学部, 准教授 (80758003)
梶田 展人 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (40931647)
三宅 尚 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 准教授 (60294823)
廣瀬 丈洋 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 研究所長 (40470124)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,380千円 (直接経費: 32,600千円、間接経費: 9,780千円)
2024年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2023年度: 11,180千円 (直接経費: 8,600千円、間接経費: 2,580千円)
2022年度: 16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
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キーワード | 水中遺跡 / 宿場町 / 火山災害 / 磐梯山 / 湖底堆積物 / 火山 / サイドスキャンソナー / 堰止め湖 / 桧原湖 |
研究開始時の研究の概要 |
1888年磐梯山噴火により磐梯山の北側に湖(桧原湖)が形成し、それに伴い桧原集落(桧原宿跡)が被災し水没した。桧原宿跡は旧宿場町のため近世・近代の文化を記録する『水中文化遺産』であり、また火山災害の痕跡を記録する『災害遺跡』としての価値を持つ。そこで、桧原宿跡の水中遺跡調査を通じて、江戸・明治の産業・文化・物流の理解、山体崩壊に伴い約500名もの住民が亡くなった災害のメカニズム、せき止め湖の形成過程、および水没により高台移転を余儀なくされた避難の過程という自然災害の総合的な理解につなげる。
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研究実績の概要 |
桧原湖湖底に水没した水中遺跡である桧原宿跡の概要を評価するために、桧原湖北岸の船上での音響調査(サイドスキャンソナー・サブボトムプロファイラー)と水上磁気探査を実施した。また、桧原湖北岸の大山祇神社社殿に続く参道沿いを中心に潜水調査を実施した。さらに、潜水調査を実施した地点において湖底堆積物を採取して、岩石物性測定を実施した。桧原湖水域から陸域の境界付近において陸上発掘調査を実施した。 サイドスキャンソナーで取得した反射強度画像を考察すると、磐梯山噴火前の桧原本村の地籍図に描かれている主要な道路や土地区画を示す特徴を確認できた。磁気探査ではスポットとして数地点磁気異常を確認できたが、桧原宿跡(遺物・遺構)との関連性は不明である。潜水調査により、参道と街道が交わる地点で石積み構造を確認することができた。また、参道から十数m東側でも南北方向に延びる石積構造を確認できた。この石造物は地籍図を踏まえると道路と宅地の境界を隔てる石壁、もしくは道路舗装と関連した石造物の可能性がある。 湖底堆積物は非破壊物性計測、X線CT画像解析、粒径分布計測、XRDによる鉱物構成解析を実施した。その結果、密度と磁化率が低い層(ユニット1)と密度と磁化率が高い層(ユニット2)に大きく区分できることがわかった。またユニット2は礫の含有量が高く、一部の試料には土器片も含まれていた。ユニット1には珪藻と火山ガラスが確認できた。以上の特徴からユニット1は1888年の磐梯山噴火後(湖形成後)、ユニット2は磐梯山噴火前の堆積物と推定できる。 陸上発掘調査でも、磐梯山噴火前後の特徴を示す堆積物を確認することができたが、街道の痕跡は確認できなかった。 地球掘削科学国際研究拠点令和4年度共同利用・共同研究集会「水中災害考古学研究への水底表層コア試料の活用」を高知コアセンターで実施した(日時:2022年12月21日~22日)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は分野横断型の多角的な研究手法を通じて水没前の桧原宿の様子を再現することを目的とする。1年目の研究では、船上音響調査、潜水調査、湖底堆積物採取、陸上発掘調査などの手法の水中遺跡(桧原宿跡)への有効性を確認した。サイドスキャンソナーの強度反射データから水底の人工物や過去の街並みを推定・評価出来ることがわかったこと、強度反射データを有効活用して潜水調査を実施したこと、湖底堆積物から磐梯山噴火前後の堆積物を採取できたことなど、一連の研究手法が水中遺跡の調査に有効であることがわかった。 一方、湖の透明度が悪かったことから、水中画像とフォトグラメトリによる湖底の遺構の記録はできなかった。また、地理情報として基本的かつ重要な「湖底地形図」の取得を実施できていない。潜水調査では南北方向の参道筋の湖底の状況を確認することができたが、東西方向の街並みの広がりの状況は確認できていない。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の1年間で研究手法の水中遺跡への有用性を一通り確認することができた。令和5年度は昨年度実施できなかった湖底地形図の作成についてマルチビーム測深機を用いて実施する。令和5年度の潜水調査と湖底堆積物調査は、作成した湖底地形図をもとに計画を立案する。ただし、桧原宿跡は数百m×数百m規模の街並みであることから、すべての水底の構造物を事細かに調査するには限界がある。そこで、今年度の潜水調査と湖底堆積物調査は対象を東西方向の街道沿いの主要な構造物、およびその周辺の堆積物に絞って調査を実施する。また、水中での発掘調査を実施予定とする。 本研究は桧原宿跡の考古学的な調査だけでなく、自然災害の発生過程を地理・地質学的な情報をもとに評価することも目的としている。そこで、マルチビーム測深調査は桧原宿跡付近だけでなく、磐梯山の噴火災害の痕跡(山体崩壊・地すべり)が記録される桧原湖中部から南部まで広げて実施する。 桧原湖はダム湖でもあり、一年間の気温変動が大きいため、年間の水位が大きく変動する。水位低下により、水没していた遺物が陸上に出没し、また、陸上発掘調査にも大きく影響する。特に水位が大きく低下するときに取得できる考古・地質学的な情報は多いと考えられる。しかし、昨年度の調査では水位の影響を考慮して計画を立てていなかった。そこで水位が低下した時期を選択して、陸上発掘調査と関連する調査(ドローンによる地形情報収集・湖底堆積物の採取・)を実施する。一方、船上の音響調査は水位が高い時期が望ましいことから、水位が高い時期に実施する。 昨年度の陸上発掘調査により、近くの鉱山採掘(金山鉱山跡)に関する遺物(ずり片)が桧原宿跡周辺に混在している可能性が明らかとなったため、湖底・陸上調査において鉱山跡に関する痕跡を引き続き注視し、陸上の採掘跡地の踏査も計画する。
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