研究課題/領域番号 |
22H00033
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分4:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤田 耕史 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80303593)
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研究分担者 |
庭野 匡思 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 主任研究官 (10515026)
齋藤 冬樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), 研究員 (60396942)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,120千円 (直接経費: 32,400千円、間接経費: 9,720千円)
2024年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2023年度: 13,520千円 (直接経費: 10,400千円、間接経費: 3,120千円)
2022年度: 11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
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キーワード | 氷河 / アジア高山域 / 氷体温度 / 氷河変動モデル / 領域気候モデル / ヒマラヤ / 温暖化 |
研究開始時の研究の概要 |
氷河は氷体の温度構造によって温暖、寒冷、ポリサーマルに分類され、それぞれ気候変化に対する応答の仕方が異なるが、氷体温度は衛星観測ができないため、アジア高山域における地理的分布と変化の実態は未解明なままである。本研究では、現地観測と高解像度再解析データ、氷体温度を詳細に見積る雪氷物理モデルにより、氷河氷体の温度構造を推定し、氷河の地理的分布と時空間変化を明らかにする。さらに、氷体の温度構造が氷河の流動と変動に及ぼす影響について熱力学流動モデルを使って明らかにし、これらの知見を元に、気候変動に対する氷河タイプごとの応答を定量化し、氷河変動推定の高精度化を目指す。
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研究実績の概要 |
今年度は、共同研究者(Wei Yang, Tandong Yao, 中国科学院チベット高原研究所およびPurevdagva Khalzan, モンゴル水文気象局)に依頼し、氷温センサー&ロガーをそれぞれ中央チベット・タングラ氷河とアルタイ山脈・ポターニン氷河に設置した(5月と7月)。秋シーズン(9~11月)にネパールヒマラヤにて現地観測を実施した。ヒドゥンバレー地域・リッカサンバ氷河では、ICIMODが主体となった観測チームに参加し、氷温センサー&ロガーを設置するとともに、2019年から継続している自動気象計による観測データの回収とメンテナンスをおこなった。ロールワリン地域・トランバウ氷河では、前年度設置した氷温ロガーからのデータ回収とメンテナンスをおこなった。この他、雨量データの回収と測器メンテナンス、自動気象計AWSからの気象データの回収とメンテナンス、氷河質量収支の計測、GPSによる測量、ドローン空撮などをおこなった(10月)。 昨年度に本研究で開発したアジア高山域向け領域気候モデルNHM-SMAP HMA(水平解像度5 km)を用いて1980年から現在にかけての長期気候計算を実施した。共同研究を実施しているInstitute of Science and Technology Austria(ISTA)のThomas Shaw博士と協力し、現地観測データによる検証を進めたところ、良好な精度を得たため、次年度に論文化する方針で計算結果の解析を進めることとした。 領域気候モデルの改良に関する研究論文の他、アジア高山域の氷河変動と降水メカニズムに関する研究論文を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年10月にネパールヒマラヤ・ロールワリン地域のトランバウ氷河の涵養域に設置した氷温ロガーについて、6つの深度のうち1つの深度でのみ通年のデータが取得した。この結果を踏まえ、次年度には別のロガーシステムを設置する予定である。計画初年度に前倒して設置した自動気象計は、順調にデータを取得しており、期待通りの成果を上げている。 さらに、共同研究者に依頼していたチベット高原およびモンゴルアルタイ山脈の氷河への氷温ロガーも予定通り設置された。これにより、これらの地域の氷温データを継続的に収集できる見込みである。また、領域気候モデルに関しては、アジア高山域を含む過去40年分の気象データの計算が完了した。このデータは現地観測データと照らし合わせることで検証されており、精度の高い良質なデータであることが確認されている。 これらの活動を総括すると、自動気象計によるデータ収集が順調であり、共同研究者と協力して進めている氷温ロガーの設置も計画通り進行している。今後、次年度に予定されている別のロガーシステムの設置により、さらに精度の高いデータの取得が期待される。 以上の点から、研究計画はおおむね順調に進展しており、次年度以降も引き続き効果的なデータ収集と解析が期待される。現地での観測データの蓄積と、領域気候モデルによる長期的な気候変動の解析は、本計画のみならず、研究コミュニティにも大いに役立つと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
計画は予定通り遂行される見込みである。具体的には、共同研究者への依頼に基づいて行われる複数の観測が含まれる。まず、5月にはチベット高原のドンケマディ氷河にて、氷温ロガーからのデータ回収とメンテナンスを実施する(中国科学院チベット高原研究所へ依頼)。これに続いて、7月にはモンゴルのポターニン氷河にて、同様に氷温ロガーからのデータ回収とメンテナンスを行う(モンゴル気象水文局へ依頼)。これらの観測により、データの確保と更なるデータの取得を確実にする。 さらに、9月以降の秋シーズンには、ネパールヒマラヤのヒドゥンバレー地域とロールワリン地域にて、氷温ロガーからのデータ回収とメンテナンスを実施する。ヒドゥンバレー地域の観測についてはICIMODの共同研究者へ依頼する。これらの地域は、ヒマラヤの気候変動の影響を理解するための重要な観測サイトである。 加えて、領域気候モデルによるアジア高山域の高解像度5kmデータの作成を進める。このデータについては、作成プロトコルと現地観測データによる検証結果を基に、論文としてまとめる予定である。論文化することにより、データの信頼性と有用性を広く認識してもらうことが期待できる。 また、氷河の質量収支モデルとの統合も進めており、これにより氷河の動態と気候変動の相互作用をより正確に理解することができる。さらに、氷河流動モデルの山岳氷河への適用も計画している。このモデル適用により、山岳氷河の動態解析が進み、氷河の将来的な変動予測に役立てることができる。 全体として計画通りに進行しており、各種観測活動やデータ解析が予定通りに実施されている。これにより、アジアの高山地域における気候変動の影響をより深く理解するための基盤が整いつつある。今後も引き続き、精度の高いデータの収集と解析をおこない、気候変動による氷河温度環境に関する知見がさらに深まることが期待できる。
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