研究課題/領域番号 |
22H00062
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪経済大学 (2023-2024) 大阪大学 (2022) |
研究代表者 |
芹澤 成弘 大阪経済大学, 経済学部, 教授 (90252717)
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研究分担者 |
岡野 芳隆 関西大学, 経済学部, 准教授 (20513120)
ZHOU YU 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (40807450)
數村 友也 京都大学, 経済学研究科, 講師 (50804960)
若山 琢磨 龍谷大学, 経済学部, 教授 (80448654)
舛田 武仁 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (80725060)
孫 寧 大阪経済大学, 経済学部, 招聘海外研究者 (30302384)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,340千円 (直接経費: 31,800千円、間接経費: 9,540千円)
2024年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2023年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2022年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
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キーワード | マーケット・デザイン / オークション / 耐戦略性 / 経済実験 / マーケットデザイン |
研究開始時の研究の概要 |
周波数オークションなどの事例を中心に、マーケット・デザインの最先端の研究を行うとともに、成果として設計したメカニズムの社会への実装を目指す。理論研究では、最初からメカニズムの候補を絞るのではなく、広い候補の中から、効率性、公平性、収入最大化などの目的にとって最適なメカニズムを設計する。そのメカニズムを実社会で役立てるために、経済実験によって理論的分析結果を検証したり、理論的性能を発揮させるように工夫したりする。
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研究実績の概要 |
複数の非同質財を非準線形な選好を持つ入札者に配分するモデルにおいて、最小価格ワルラス・ルールが、耐戦略性、パレート効率性、個人合理性や対称性などの望ましい性質を持つルールであることが証明されている。周波数オークションで同時競り上げオークションが実際に使用されている主要な理由の一つは、同時競り上げオークションの結果が最小価格ワルラス・ルールと一致するからだとされている。しかし、同時競り上げオークションの結果が最小価格ワルラス・ルールと一致することを証明するためには、競り上げにおける価格の連続的な変化と選好の準線形性を仮定する必要がある。そのどちらも、実際のオークションでは成立し得ない仮定である。例えば、実際の同時競り上げオークションでは、極端に長い時間がかからないように、競上げ幅を非常に大きく設定されている。そこで、価格の連続的な変化と選好の準線形性を仮定できない場合に、同時競り上げオークションの結果が最小価格ワルラス・ルールと一致するかどうかを分析し、1)その二つの結果が競上げ幅よりもはるかに大きく乖離すること、2)同時競り上げオークションが競上げ幅よりもはるかに大きい非効率性をもたらすこと、3)同時競り上げオークションが競上げ幅よりもはるかに大きな戦略的行動の誘因をもたらすこと、を示した。 オークション・モデルでヴィッカリー・オークションは、ゲーム理論で最も頑強である支配戦略均衡よって効率的に財を配分することを保証されている(耐戦略性)が、現実にはその性能を発揮できないとしばしば実験経済学の結果から批判される。しかし、経済実験では被験者は耐戦略性を十分に理解していないために、耐戦略性が発揮されていない可能性がある。そこで、被験者に耐戦略性を理解させるための練習問題を課し、その効果を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的で主要分析対象として挙げている周波数オークションは、数学的には複数の非同質財を非準線形な選好を持つ入札者に配分するモデルになる。そして、同時競り上げオークションは、アメリカなど多くの国の周波数配分で実際に使われている重要なルールである。したがって、同時競り上げオークションを、複数の非同質財を非準線形な選好を持つ入札者に配分するモデルにおいて分析することは、本研究だけではなく、オークション理論にとっても重要である。その同時競り上げオークションについての重要な分析結果を出し、当該分野での世界トップ・ジャーナルの一つであるGames and Economic Behaviorに論文(Zhou Yu、Serizawa Shigehiro、2023)として公刊することが決まった。 やはり研究目的で主要分析対象として挙げている理論的な研究成果を現実に役立てるための工夫として、被験者に耐戦略性を理解させるための練習問題を課し、その効果の分析を進めている。その分析結果をまとめ、コンファレンスで発表したり、当該分野の世界的な研究者(Chew Soo Hong教授やJohn Duffy教授 )に説明したりし、高い評価を受けている。同様の目的で被験者に耐戦略性についてアドバイスした効果を分析した論文(Masuda、Mikami、Sakai、Serizawa、Wakayama、2022)は、Experimental Economicsに公刊できた。被験者に耐戦略性についてアドバイスすることには、いわゆるDemand Effectを招くとして、当初は多くの実験経済学者から強い批判を受けていた。しかし、実験経済学分野の研究者に本研究のアプローチが受け入れられ始めた。 このように、本研究の成果が世界的に評価されつつあるので、「順調に進展している」と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に、複数の非同質財を非準線形な選好を持つ入札者に配分するモデルにおいて、同時競り上げオークションの結果が、最小価格ワルラス・ルールとかけ離れることを示した論文が公刊されることになった。この結果により、最小価格ワルラス・ルールの結果と一致または近似するダイナミックなオークション・メカニズムを設計することが必要となる。さらに、そのように設計されたメカニズムが機能するためには、戦略的行動の誘因を引き起こさないことも必要である。したがって、最小価格ワルラス・ルールの結果と一致または近似し、かつ戦略的行動の誘因を引き起こさないダイナミックなオークション・メカニズムの設計に取り組む。 実は、この取り組み自体は、上記論文の分析と並行して進めていたが、そのmotivationが理解されず、世界的に評価を獲得することへのハードルとなっていた。しかし、上記論文が当該分野での世界トップ・ジャーナルの一つであるGames and Economic Behaviorに公刊されたことにより、motivationの説明が容易になった。そこで、今後はより積極的にこの取り組みの成果を世界的にアピールしていく計画である。 また、(温暖化ガス)排出削減メカニズム、Web 広告オークション、入学者選抜制度、研修医マッチング制度、臓器移植ネットワークの制度設計に並行して取り組む計画である。 2022年度に、オークションにおいて被験者に耐戦略性を理解させるための練習問題を課した経済実験のデータを分析した。同様な実験は投票モデルやマッチング・モデルでも実施・分析する価値があると思われる。2023年には、そのような研究も進めることを計画している。
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