研究課題/領域番号 |
22H00071
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分8:社会学およびその関連分野
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
宮地 尚子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (60261054)
|
研究分担者 |
野坂 祐子 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (20379324)
田辺 肇 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (60302361)
後藤 弘子 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (70234995)
青山 薫 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (70536581)
角尾 宣信 和光大学, 表現学部, 講師 (80929969)
森 茂起 甲南大学, 人文科学研究科, 特別研究員 (00174368)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
35,490千円 (直接経費: 27,300千円、間接経費: 8,190千円)
2024年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
|
キーワード | 精神医学 / トラウマ / ジェンダー / 災厄 / ハイブリッド化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、災厄とハイブリッド化の時代のトラウマとジェンダーの相互作用を、1)ケアと臨床、2)逸脱、3)文化創造の3側面から明らかにするものである。 災厄は、自然災害やパンデミックを含み、ハイブリッド化はヴァーチャルとリアルの混交する生活を指している。本研究は、この2つのキーワードで現代を捉えつつ、トラウマとジェンダーの相互作用を、とくにドメスティック・バイオレンスや性暴力といったジェンダーに基づく暴力の変容に焦点をあてながら明らかにする。 理論的研究に加え、トラウマのケアと臨床の専門家、被災地やマイノリティの支援を行うNPO団体、依存症の当事者グループなどと連携して実践的研究を行う。
|
研究実績の概要 |
本研究は、災厄とハイブリッド化の時代のトラウマとジェンダーの相互作用を、1)ケアと臨床、2)逸脱、3)文化創造の3側面から明らかにするものである。災厄は、自然災害やパンデミックを含み、ハイブリッド化はヴァーチャルとリアルの混交する生活を指している。本研究は、この2つのキーワードで現代を捉えつつ、トラウマとジェンダーの相互作用を、ジェンダーに基づく暴力(Gender-Based Violence=GBV)の変容に焦点をあてながら明らかにする。 令和4(2022)年度は、「災厄がもたらしたもの:トラウマとジェンダーの新たな相互作用」をテーマに設定し、上記の3側面の研究を進めた。 1)では、宮地は、トラウマに関する一般向け書籍を日本と韓国で刊行した。また、精神科臨床の感情労働としての側面や、精神医学におけるジェンダー平等に関して、学会報告・論文執筆を行った。宮地と野坂は、日本トラウマティック・ストレス学会第21回大会(2022年7月)でシンポジウム「ジェンダーに基づく傷つきと支援体制」を企画・実行した。野坂と田辺はそれぞれ、子どもの逆境体験によるトラウマとジェンダーの関係について論文を発表した。 2)では、後藤は、刑事司法におけるジェンダー問題や学校での性暴力防止の取り組みに関して講演や研修を行った。宮地は、薬物依存などのアディクションとトラウマに関する講演を行った。野坂は、トラウマインフォームドケアの観点から、アディクションや加害者臨床について学会報告等を行った。 3)では、青山は、国際移住とセクシュアリティの関係に関して考察を進め、性的マイノリティ支援について国内外で学会報告等を行った。角尾は、トラウマと笑いやユーモアについて学会報告やインターネット記事の発表を行った。宮地は、美術館の展覧会のカタログにトラウマとアートの関係という観点から協力した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和4(2022)年度はプロジェクトの初年度であったため、春の共同研究会議では、研究の全体像、研究方法、倫理的側面、役割分担の確認、主要文献の共有などを行った。そこから年間テーマ「災厄がもたらしたもの:トラウマとジェンダーの新たな相互作用」に沿って研究を進め、書籍・論文の刊行、学会報告、インターネットでの発表などを行い、研究成果の発信に努めた。また、医療関係者や警察・法曹関係者、教育者などに向けた講演や研修、政策形成における助言、新聞や雑誌の取材など、様々な形で研究協力や共同研究を行った。 ・日本における性暴力被害者ワンストップ支援センターの先駆けである大阪SACHICO と、コロナ禍における相談の状況、課題などについて共同研究を行った。また、被災地(仙台他)の調査を行い、長期的な復興過程におけるトラウマの複雑化・潜在化の考察を行った。 ・秋にシンポジウム「災後のユーモア、災間の笑い」をweb開催で行い、戦争や震災などの災厄とトラウマの関係について、ユーモアや笑いという角度から議論した。 ・森美術館の展覧会「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」(2022年6月29日-11月6日)のカタログや、NHK番組Eテレ『理想的本箱 君だけのブックガイド』(2022年10月15日)で宮地の書籍や研究が紹介されるなど、研究成果が社会的反響を呼んでいる。 ・令和5(2023)年度の年間テーマ「ハイブリッド化の時代のトラウマとジェンダー」についても、先行して、論文発表や学会報告など研究を進めている。令和6(2024)年度の年間テーマ「ケアと臨床」を先取りして、宮地がケアとトラウマと時間について哲学者と行った連続対談が2023年に刊行予定である。 以上のような理由から、研究は当初の計画以上に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5(2023)年度は、「ハイブリッド化の時代のトラウマとジェンダー」をテーマに研究を進める。 ハイブリッド化という視点から、トラウマとジェンダーの相互作用を捉え直す。SNSの利用やテレワークの普及など、リアルとヴァーチャルのハイブリッド化が進む中でのジェンダーに基づく暴力(GBV)やいじめについて、事例を収集し検討する。学校/職場/家庭といった空間的ゾーニングおよび学業/仕事/プライベートといった時間的なゾーニングの困難、身体感覚や親密圏の変容、公私の関係の複雑化などを、公的領域/親密的領域/個的領域の三分法を用いて、理論的に考察する。また、デジタル技術による障害からの解放やジェンダー規範の撹乱可能性なども考察する。 ・共同研究会議1(春)事例研究、調査報告、文献整理、理論的討議 ・共同研究会議2(夏)海外研究協力者である M. Hopchet とE. Mujica をオンライン招聘し、オンラインセラピーやハイブリッド化時代の GBVに関する研究会議とワークショップを行う。多角的な議論のため、ポリヴェーガル理論や神経生理学の専門家を招き、最新の知見も共有する。 ・ハイブリッド化時代のGBVと被害者支援について、海外調査を行う。
|