研究課題/領域番号 |
22H00081
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中野 泰志 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (60207850)
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研究分担者 |
青木 千帆子 筑波技術大学, その他部局等, 特任助教 (00584062)
野口 武悟 専修大学, 文学部, 教授 (80439520)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,380千円 (直接経費: 32,600千円、間接経費: 9,780千円)
2024年度: 12,870千円 (直接経費: 9,900千円、間接経費: 2,970千円)
2023年度: 14,040千円 (直接経費: 10,800千円、間接経費: 3,240千円)
2022年度: 15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
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キーワード | プリント・ディスアビリティ / 読書 / バリアフリー / アクセシビリティ / 学校図書館 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、視覚障害、発達障害、肢体不自由等のあるプリント・ディスアビリティのある幼児児童生徒がすべての図書にアクセス出来るようにするために、学校図書館を対象に実態調査を実施した上で、アクセシブルな図書を迅速に製作・共有・提供する読書バリアフリーシステム(①アクセシブルな電子データの効果的な製作ツール、②製作したデータを学校図書館間で効果的に共有するサーバーシステム、③多様な電子データに対応した新しい閲覧アプリから構成)を開発する研究である。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、初等中等教育に必要不可欠な読書バリアフリーの実態を詳細に調査し、バリアフリー化の社会的障壁を明らかにした上で、具体的な対応策として、アクセシブルな図書を迅速に製作・共有・提供する「読書バリアフリーシステム」を構築し、その効果を評価することであった。2022年度は、以下の研究を実施した。 学校図書館に対する実態調査研究では、東京大学先端科学技術研究センターが文部科学省の委託により実施した「令和4年度学校図書館等における読書バリアフリーコンソーシアムアンケート」の調査データをもとに、学校図書館の整備や運営、バリアフリー図書の製作・共有・活用等の現状を分析した。また、先進事例校を抽出し、訪問してのインタビュー調査に着手した。 アクセシブルな図書の種類や製作方法等に関する調査研究では、米国における初等中等教育及び高等教育、それぞれにおけるアクセシブルな書籍データを提供する体制、及び、現場レベルでの個別調整のあり方を知ることを通し、ユニバーサルデザインと個別調整のバランスについて検討する手がかりを得るために、アメリカでの教材データ共有方法に関する文献調査、現地訪問調査を行った。 読書バリアフリーシステムの開発研究では、バリアフリー図書製作支援アプリ(図書をアクセシブルな電子データに複製・変換することを支援するアプリ)を試作・公開し、489校の小中高等学校に在籍する894人の障害児に提供し、試用評価を実施した。また、学校図書館読書バリアフリーネットワークシステム(学校図書館が公衆送信を使って、アクセシブルな図書を相互に貸借することを可能にするファイル共有システム)を構築するために、セキュアなファイルサーバーシステムを試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、1)学校図書館に対する実態調査研究、2)アクセシブルな図書の種類や製作方法等に関する調査研究、3) バリアフリー図書製作支援アプリと学校図書館読書バリアフリーネットワークシステムの試作研究を実施し、「読書バリアフリーシステム」の第1次試作を行うことであった。 学校図書館に対する実態調査研究では、調査実施にかかる関係者との調整に時間を要したことやコロナ禍の影響により、当初2022年度に実施する予定の研究内容の一部が2023年度にずれ込んだが、研究期間内での研究遂行には大きな支障のない範囲である。 アクセシブルな図書の種類や製作方法等に関する調査研究では、現地調査により、高等教育機関については全体の概要を掴むことができた。ただし、初等中等教育の副教材の取り扱いや相互利用については十分な事例が集まらなかった。 読書バリアフリーシステムの開発研究では、計画通り、「バリアフリー図書製作支援アプリ」と「学校図書館読書バリアフリーネットワークシステム」の試作が完了し、「読書バリアフリーシステム」の第1次試作の試用評価を実施することができた。 上述の通り、研究の一部を2023年度に計画していた研究と入れ替えて実施したり、事例が十分に集まらなかったりした点はあるが、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標は、視覚障害、発達障害、肢体不自由等のあるプリント・ディスアビリティのある幼児児童生徒がすべての図書にアクセス出来るようにするために、学校図書館を対象に実態調査を実施した上で、アクセシブルな図書を迅速に製作・共有・提供する読書バリアフリーシステムを開発することである。2022年度の研究成果を踏まえ、今後は、以下の通り、研究を推進する予定である。 学校図書館に対する実態調査研究では、全国の学校図書館におけるバリアフリー図書の製作・共有・活用等の先進事例への訪問によるインタビュー調査を行い、これらを円滑に実施するための共通点(学校内の体制、学校外との連携等)を明らかにする。その知見をふまえて、学校図書館においてバリアフリー図書の製作・共有・活用等を推進するためのガイドラインを作成し、公開する。 読書バリアフリーシステムの開発研究では、バリアフリー図書を増やすために、これまで開発してきたワードファイル、テキストファイル、PDFファイル、画像ファイルからバリアフリー図書を製作するための「バリアフリー図書製作支援アプリ」の改良を行う。また、ユーザのニーズに応じて図書を閲覧できるようにするために、これまで開発してきた「学校図書閲覧アプリ」をアクセシブルなEPUB3にも対応できるように改良する。さらに、「学校図書館読書バリアフリーネットワークシステム」の運用を開始し、試用評価に基づき、システムの改良を行う。 読書バリアフリー環境の普及・提言研究では、これまで実施してきた製作団体調査のとりまとめを行い、フォローアップのインタビュー調査を実施する。その上で、読書バリアフリー環境の普及・提言を3年間の取組内容を踏まえてまとめ、現場で活用可能な研修コンテンツを作成する。 以上の研究の成果を国内外の学会やシンポジウム等で公開する計画である。
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