研究課題/領域番号 |
22H00087
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分10:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松宮 一道 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (90395103)
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研究分担者 |
伊師 華江 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (10435406)
立花 良 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (30866398)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
43,290千円 (直接経費: 33,300千円、間接経費: 9,990千円)
2024年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2023年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2022年度: 22,230千円 (直接経費: 17,100千円、間接経費: 5,130千円)
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キーワード | 身体感覚 / 実験心理学 |
研究開始時の研究の概要 |
対面での他者とのやりとりを、身体が触れなくても身体の感触として感じることがあり、この現象は、身体の外側へ拡がる身体感覚がその理由とされる。しかし、従来の研究は人と人の身体反応の同期を示す現象論に留まっており、身体感覚の拡がりを評価した研究はほぼ存在しない。本研究の目標は、身体感覚の拡がりを評価し、この拡がりと心理状態との関連と、その機序を解明する。さらに身体感覚の拡がりを操作する手法を確立する。
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研究実績の概要 |
本研究では、身体感覚に備わった他者との関係に関する情報を「身体に埋め込まれた社会性」と呼び、その実証的理解を前進させることである。具体的には、身体を介した相互作用から身体感覚の拡がりを評価し、これらの拡がりと人の心理状態との関連と、その背後にあるメカニズムを解明することである。しかし、従来の実証研究の多くは、人と人の身体反応の同期を示す現象論に留まっており、身体感覚の拡がりを評価しなかった。当該年度は、昨年度に構築した実験環境を使って、他者の視覚情報が身体感覚に与える影響の計測を行った。あまり過去に例のない研究のため、実験条件を見極める必要があり、様々な条件で実験を試みた。具体的には、我々が開発した触覚振動刺激に対する応答が他者の視覚情報の呈示によってどのような影響を受けるのかの調査、モーションキャプシャシステムを使ってリアルな他者の動きを視覚刺激として呈示したときの触覚応答の調査、ロボットアームを使った触覚刺激応答に対する他者の影響の調査を行った。これらの実験を通して、どのような条件下で身体に埋め込まれた社会性が大きく現れるかが徐々に明らかになってきた。身体感覚の拡がりが生じる条件の探索にかなりの時間を費やしたが、概ね条件の絞り込みに成功した。本研究で得られた成果により、2件の国内会議の招待講演の依頼を受けた。また、身体に埋め込まれた社会性に関わる意思決定についての研究成果はNatureグループが出版する学術誌Communications Biologyに掲載された。この成果は国内外で広く報道され、その件数は20件にも及んだ。その上、この成果について、来年度に国内の研究会で招待講演を行うこともすでに決定している。さらに、本研究で利用しているバーチャルリアリティ技術について日本工業出版社から執筆依頼を受けて、ヘッドマウントディスプレイの精度に関する解説記事を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度に構築した実験環境を用いて、身体に埋め込まれた社会性が効果的に現れる実験条件を探索し、最終年度のモデル作成のために必要となる実験データの収集を行うことを目標としていた。概ね予定通り、所望の効果が大きく現れる実験条件の選定に成功した。しかし、これらの実験条件の探索にかなりの時間を費やしたため、本実験を行うところまでできなかったが、現在、急ピッチで本実験の準備を進めており、近日中には本実験を行える状況にまでなっている。そのため、本研究課題の進捗状況について深刻な遅れはないと考えている。また、身体に埋め込まれた社会性に関わる意思決定についての研究成果は学術誌Communications Biologyに掲載された。この研究成果は国際的に広く報道され、世界的な経済誌Forbesやフランスの医療記事サイトなどで紹介された。その他の国外インターネットメディアでも取り上げられ、その数は20件にも及んだ。また、国外メディアからは取材の依頼も受けた(2件)。国内でも広く報道され、日本経済新聞で2回、日経産業新聞で1回取り上げられ、大学ジャーナルなど14件の国内インターネットメディアでも取り上げられた。日本経済新聞においては取材もあり、次世代を担う技術として紙面で紹介された。さらに、本成果が掲載されたCommunications Biologyのwebページにある「Trending - Altmetric」において、出版されてから約2週間Top 4 articlesにランクインした。その他にも、国内会議で2件の招待講演の依頼を受けたり、令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)を受賞したりするなど、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、身体に埋め込まれた社会性のモデルを構築することを目標としている。そのためには、十分な実験データを収集することが重要となる。我々が所有する被験者募集システムを活用して、十分な人数の実験参加者を集めて信頼できるデータの収集に努め、それらのデータに基づいてモデルを構築していきたいと考えている。大人数の実験参加者のデータの収集にはかなりの時間を要するが、来年度の夏ごろまでにはデータの収集を終わらせたいと考えている。
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