研究課題/領域番号 |
22H00092
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分10:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
宮本 健太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (20778047)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,730千円 (直接経費: 32,100千円、間接経費: 9,630千円)
2024年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2023年度: 15,210千円 (直接経費: 11,700千円、間接経費: 3,510千円)
2022年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 意思決定 / メタ認知 / 脳機能イメージング / 社会性 / 想像力 / 展望的認知 / 霊長類 / 機能的MRI / 経頭蓋超音波刺激法 |
研究開始時の研究の概要 |
心や認知の状態を自己評価する能力は「メタ認知」と呼ばれ、ヒトや動物の意識的な行動に欠かせない。未来および他者の認知を予測する展望的・社会的メタ認知は、探索的な行動生成・学習のため特に重要である。本研究ではまずヒトとサルにおける神経メカニズムを機能的MRI法や電気生理学的記録法を用いて明らかにし「自己意識」や「他者への想像力」の進化的起源を解明する。次に経頭蓋超音波刺激法等による脳深部刺激技術を開発し、神経活動と行動の因果性を証明する。得られた知見を教育やリハビリテーション分野へ波及させる。
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研究実績の概要 |
心や認知の状態を自己評価する能力は「メタ認知」と呼ばれ、ヒトや動物の意識的行動に欠かせない。これまでに過去の自分自身の意思決定を振り返る回顧的・内省的メタ認知の神経回路については、研究代表者によるマカクサル研究により明らかになったが、一方で未来や他者のメタ認知に関しては重要にも関わらず、その仕組みがほとんど分かっていない。本研究課題では、研究代表者らが開発した、動物にも適用可能な「未来の自身の能力に起因する内的不確実性と、未来の外部環境に起因する外的不果実性の比較」課題や、「自分自身と他者の能力の予期と比較」課題を用いて、未来と他者に対する推論と意思決定を可能にする神経メカニズムの解明を目標とする。未来の展望的メタ認知に関しては、研究代表者らが開発した課題を遂行中のサルに対して、機能的MRI法を適用し取得した全脳活動データを解析し、ヒトの展望的メタ認知に関わる前外側前頭葉47野と機能的に相同な脳領域をサルの前頭葉においてはじめて同定した。他者の社会的メタ認知に関しては、自分自身のメタ認知能力を他者に投影し、他者の課題成績を予測するのに関わる前頭葉領域を、健常ヒト成人に対する機能的MRI実験によって同定した。その脳領域の神経活動を、経頭蓋磁気刺激法を用いて非侵襲的・可逆的に阻害したところ、他者の課題成績を正しく推定する能力のみが特異的に影響を受けることが見いだされた。以上の成果に基づいたアイデアをまとめた査読付き総説論文が米国Cell PressのTrends in Cognitive Sciences誌より出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
未来の展望的メタ認知に関しては、2021年度までに、研究代表者らが開発した「未来の自身の能力に起因する内的不確実性と、未来の外部環境に起因する外的不果実性の比較」課題を遂行中のサル3匹に対して、機能的MRI法を適用し、データを取得していた。2022年度は、全脳活動データのプレプロセシングおよび統計解析を行った。その結果、これまでサルにおいては解剖学的な相同部位が存在しないと考えられてきた「ヒトの展望的メタ認知に関わる前外側前頭葉47野」と機能的に同じ役割を担う脳領域が、サルの前頭葉に存在することが初めてわかった。 他者の社会的メタ認知に関しては、自己と他者の能力に基づいた課題成績の予測能力を測る認知課題を新たに開発し、自分自身のメタ認知能力を他者に投影し、他者の課題成績を予測するのに関わる前頭葉領域を、健常ヒト成人(N=30)に対する機能的MRI実験によって同定した。健常ヒト成人(N=20)に対して、同定された脳領域の神経活動を、経頭蓋磁気刺激を用いて非侵襲的・可逆的に阻害したところ、他者の課題成績を正しく推定する能力のみが特異的に影響を受けることが見いだされた。
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今後の研究の推進方策 |
未来の展望的メタ認知に関しては、機能的MRIで同定した神経基盤が、脳深部にも存在したことから、脳深部にも適用可能な経頭蓋超音波法を適用し、当該領域の神経活動を一時的に阻害することによるメタ認知成績への影響を定量することで、その領域の行動生成に対する因果的な役割を明らかにすることを次の目標とする。経頭蓋超音波法は新しい技術で、その神経活動への動作原理および効果量はほとんど分かっていない。そこで、サルの脳に対して経頭蓋超音波刺激の最中およびその前後の脳活動をMRIで計測する技術を開発し、その神経活動への作用を時系列を追って詳細に調べ、上記の実験の結果を理解するのに役立てる。 他者の社会的メタ認知に関しては、得られた成果を原著論文にまとめるとともに、社会的メタ認知に基づいて推定・比較を求める対象を、これまでに行った実験で対象とした視知覚能力以外もに広げる。より一般化された条件下において、社会的メタ認知能力の神経基盤がどのような役割を果たすのかを明らかにする。
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