研究課題/領域番号 |
22H00106
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 初果 東京大学, 物性研究所, 教授 (00334342)
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研究分担者 |
小野塚 洸太 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 助教 (90995341)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,600千円 (直接経費: 32,000千円、間接経費: 9,600千円)
2024年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2023年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2022年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | オリゴマー伝導体 / 室温高伝導 / 電子相関制御 / 電子共役系制御 / バンドフィリング制御 / オリゴマー分子性伝導体 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代の情報化社会に向けて、人と親和性が高く、限られた種類の安価な元素で作られる環境調和型の有機エレクトロニクスに注目が集まっている。現在、素材として高分子伝導体が用いられているが、その構造的な乱れのために伝導機構の十分な理解、伝導性制御には至っておらず、物性研究からの貢献が強く求められている。 本研究では、実用性はあるが伝導機構解明、精密な物性制御が難しい高分子伝導体と、構造―物性相関研究による伝導機構解明は行えるが、物性制御範囲が限られている低分子伝導体の中間に位置し、双方の利点と知見が取り込めるオリゴマー伝導体を対象とし、無機金属を凌駕する室温伝導性付与で有機エレクトロニクスを発展させる。
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研究実績の概要 |
次世代の情報化社会に向けて、人と親和性が高く、限られた種類の安価な元素で作られる環境調和型の有機エレクトロニクスに注目が集まっている。現在、有機エレクトロニクスの素材には限られた高分子伝導体が用いられているが、その構造的な乱れのために伝導機構の十分な理解、伝導性制御には至っておらず、物性研究からの貢献が強く求められている。 本研究では、実用性はあるが伝導機構解明、精密な物性制御が難しい高分子伝導体と、構造―物性相関研究による伝導機構解明は行えるが、物性制御範囲が限られている低分子伝導体の中間に位置し、双方の利点と知見が取り込めるオリゴマー伝導体を対象とする。そして、オリゴマー伝導体の開発、伝導機構の解明、精密な伝導性制御、ひいては無機金属に迫る室温最高伝導性目指した「電子相関系オリゴマー分子性伝導体の開発と精密伝導性制御」を目的としている。 2022年度は、オリゴマー分子性伝導体の開発として、オリゴマー分子伸長効果を調査した。オリゴマー分子の伸長は電子共役長の増大に該当し、その結果、キャリア電子間クーロン反発力(U)が減少して、電子相関パラメータ(U/W)をユニバーサルに変化させることができる。そして、オリゴマー4量体である4PS(P-S-S-P, P: 3,4-(2,2-3,4-(2',2'-dimethylpropylenedioxy)thiophene), S:3,4-ethylenedithiothiophene)を溶解性と光安定性の課題を凌駕して合成し、そのドープした塩4PS(PF6)1.2(solvent)の単結晶を作製したところ、室温電度が36 Scm-1で、室温以上で金属となるオリゴマー塩であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、オリゴマー分子性伝導体の利点、i)結晶にも薄膜にもなりうる、ii)構造―物性相関による伝導機構の解明が可能である、iii)精密な伝導性制御が可能である点に注目する。i)において、従来、結晶性は低分子、薄膜性は高分子伝導体の利点、ii)は低分子性伝導体の利点を取り込んでおり、iii)はオリゴマー伝導体が、幅広い電子相関パラメータ(U/W; Uはオリゴマー分子内の伝導キャリア間でのクーロン反発、Wはオリゴマー分子間の相互作用)範囲を有することに起因する。上記3つの特性に注目して、従来の低分子伝導体と高分子伝導体を繋ぐ新たな「電子相関系オリゴマー分子性伝導体の開発と精密伝導性制御」を目的とした。 2022年度は、オリゴマー分子の伸長効果を調べた。オリゴマー分子の伸長は電子共役長の増大に該当し、その結果、キャリア電子間クーロン反発力Uが減少して、電子相関パラメータ(U/W)をユニバーサルに変化させることができる。溶解性、光安定性という合成上の課題を混合ユニットからなる4PSを分子設計することで凌駕し、4量体オリゴマー4PSの合成、ドープした塩4PS(PF6)1.2(solvent)の単結晶の作製を行い、室温以上で金属性を示すことを明らかにした。実際、オリゴマー分子のユニットを、2量体、3量体、4量体と伸長させ、そのドープした4量体のPF6塩の室温伝導度を比較すると、2量体のPF6塩と比較して約6桁向上していることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、オリゴマー分子性伝導体の機構解明、特に金属的挙動を示した4量体塩の4PS(PF6)1.2(solvent)に関して、伝導性、磁性、熱電能などの物性測定と共に、結晶性オリゴマー分子性伝導体の結晶構造に基づいて、第一原理計算で電子構造を行い、物性―構造相関により伝導機構を明らかにすることを予定している。 さらに、オリゴマー分子性伝導体の精密伝導性制御として、電子相関パラメータ(U/W)を系統的に変化させることにより、伝導性の精密制御を行う。オリゴマー伝導体の構成ユニットの種類と配列、分子の長さ(共役長)、末端基のカルコゲン置換(S原子から、Se原子、Te原子へ)、分子軌道の形状、エネルギー準位に注目する。また、バンドフィリング制御、つまり電荷の異なる対アニオン、プロトンが欠損する対アニオンを用いることにより、系統的なバンドフィリング制御を行い、U/Wの効果を調べる予定である。
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