研究課題/領域番号 |
22H00110
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
幸田 章宏 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (10415044)
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研究分担者 |
下村 浩一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60242103)
三原 基嗣 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (60294154)
清水 克哉 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (70283736)
有田 亮太郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80332592)
髭本 亘 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (90291103)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
43,160千円 (直接経費: 33,200千円、間接経費: 9,960千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2022年度: 22,750千円 (直接経費: 17,500千円、間接経費: 5,250千円)
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キーワード | 超伝導 / ミュオンスピン回転 / 水素化物 / 超高圧 |
研究開始時の研究の概要 |
超高圧・強磁場という複合極限条件下のミュオンスピン回転・共鳴(μSR)測定の技術開発により、水素化物超伝導物質中の水素の位置・荷電状態・ダイナミクスを解明することを目的とする。近年、進展の著しい超高圧下で超伝導を示す水素化物をミクロな視点から調べ、超伝導発現の重要な因子と考えられている水素の電子状態を明らかにする。 本研究目的の達成のために、平板型ダイヤモンドアンビルセル(DAC)をμSR実験に応用し、これまでμSR測定が行われたことのない10万気圧以上の圧力域での実験を試みる。さらに、超精密磁場制御の手法を用いて0.1ppmの高精度でのミュンスピン共鳴分光を実現する。
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研究実績の概要 |
常圧下で超伝導を示すことが知られるPdHxのミュオン実験に取り組んだ。オンラインで水素を吸蔵させるためのガスハンドリング設備をビームラインに設置し、吸蔵にともなうμSR時間スペクトルの変化の観察を試みた。しかし、試料取扱いの容易さを重視して薄膜状のPdを積層した試料を用いたところ、水素の吸蔵に予想以上に時間を要することが明らかとなった。低温での吸蔵反応の観察を目的としていたが、そのためにはより表面積を増やす必要があることがわかった。 一方、μSR用高圧セルは基本設計を進めつつ、高圧セル部品として使用予定のCuBe, WC, ダイヤモンドなどの材料のμSR信号の確認をビームを用いて実施した。また高圧実験の第一段階のターゲット候補として考えているYH2の常圧下μSR時間スペクトルを測定した。その結果、H-μの少数スピン系に特徴的な回転信号を観測した。このような回転信号はS/N比が非常に厳しい高圧セル中などの測定条件において、試料と試料以外の信号を識別するための有用な指針となる。 高圧セルの主要な部品であるダイヤモンドアンビルは当初計画では平板ディスクを採用する予定であったが、より高い発生圧力を目指すうえで穿孔型ダイヤモンドアンビルを検討すべきであるとの結論にいたり、試作をおこなうこととした。 強磁場精密分光実験に必要な精密磁場フィードバックシステムについては、磁場発生空間およびμSR検出器との幾何学的な配置について検討をかさねたが、最適な配置についての結論が得られず、強磁場下ビーム試験を先行して検出器の性能について検証を進めることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
PdHxの実験に関しては水素吸蔵の最適条件を見出すことができず、年度内のビームタイムで実験を完遂することができていない。 超高圧セル開発については基礎設計についての指針や構成部品などのミュオン照射に対する評価などで進捗はあったが、より重要で、実験のフィージビリティを左右するS/N比のビーム試験による検証が進んでいない。これらの検証にはオンビームでの実験が必須であり、限られたビームタイムをまず構成部品のビーム試験にあてざるを得なかったためである。またオフビームで検討を進めることのできる実際の高圧発生の取り組みも遅れが生じている。 強磁場分光のための精密磁場制御システムの開発は、強磁場μSR分光器との組み合わせ方法についての検討が遅れている。強磁場μSR分光器の最適化に関してはビーム試験が必須であるが、施設の冷却水等インフラ運転スケジュールから超伝導電磁石の運用に制限が生じてしまうためである。結果、年度内の励磁実験は実現できていない。
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今後の研究の推進方策 |
PdHxの水素吸蔵については、薄膜積層試料をやめて粉末試料を使用することで試料表面積の増大、それによる吸蔵速度の上昇を目指す。これにより低温での水素吸蔵の達成と、超伝導状態でのμSR測定を実現する。 超高圧セル開発に関して、基礎データの取得は完了しているので、翌年度のビームタイムはS/N比の検証に重点的に割り当てていく。並行して高圧発生のテストも実施していく。 計画初年度はPdHxの実験と超高圧セル開発の実験というふたつのテーマを別々のビームタイム枠として、ふたつの別々の実験グループにより遂行してきた。しかしPdHx水素吸蔵実験では吸蔵した水素の回収にかなりの時間をかけなければならないことがわかってきた。そこで水素回収のために実験エリアを占有している時間において、超高圧セルの評価のビーム試験を実施するなど、効率的なビームタイムの利用を検討している。 精密磁場フィードバックシステムの構築は強磁場μSR分光器の最適化と不可分な検討項目であり、施設インフラ等の制約から限られたビームタイムとならざるを得ないのであれば、まずは強磁場μSR分光器について性能を確立することが優先されるべきであると判断する。強磁場μSR分光器について最適化の作業を急ぎ、その上で精密磁場フィードバックシステムを構築することとする。
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