研究課題/領域番号 |
22H00121
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分14:プラズマ学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
西内 満美子 (高井満美子) 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 光量子ビーム科学研究部, 上席研究員 (70391315)
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研究分担者 |
榊 泰直 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 量子応用光学研究部, 上席研究員 (00354746)
千徳 靖彦 大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (10322653)
劉 暢 奈良女子大学, 理学部, 研究員 (20894629)
今 亮 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 光量子ビーム科学研究部, 主任技術員 (80725838)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,730千円 (直接経費: 32,100千円、間接経費: 9,630千円)
2024年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2023年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | 超高強度レーザー / イオン加速 / レーザーの時間波形制御 / レーザー駆動重イオン加速 / 高温・高密度非平衡プラズマ / 多価重イオン / 高密度非平衡プラズマ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではPW級フェムト秒レーザーの時間波形を制御し超高温固体密度重金属プラズマを生成する。輻射される硬X線のピコ秒時間分解計測及び広帯域温度計測を行い、発生する重イオンの価数・エネルギーを同時計測し、プラズマ内部の加熱・電離及び加速場のダイナミクスの履歴を捉え、重金属プラズマ形成過程と加速過程の包括的理解と制御を目指す。本手法の確立により、巨大加速器で作り出された重元素や不安定核種を、PW級フェムト秒レーザーにより、所望の多価電離ビームとして極短時間で取り出し可能となり、原子核や物性研究での新領域の開拓へつながるブレークスルーとなる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、既存技術に則った重イオン加速器では得られないパラメータを持つ可能性のある、レーザー駆動高重イオン型の新規加速器技術の確立を目指し、重元素を効率的に多価電離・加速する手法を確立するための条件を探索することである。効率の良い加速を行うためにはできるだけ初期段階にて重イオンを多価電離状態とすることが必要不可欠であるため、PW級フェムト秒パルスレーザーを固体薄膜に照射し、固体密度にできるだけ近い状態の重イオンプラズマを作り出すことで、高温プラズマ中での電子衝突過程にて多価電離した重イオンを作り出すことを試みる。 多価電離され、高エネルギーでターゲットより発生する重イオンは、使用するターゲットの厚みによって、その発生方向が変化するため、イオンの検出器を複数台設置して、発生方向をモニターする必要がある。 R4年度は既存のトムソンパラボライオンスぺクトロメーター(ターゲット垂直方向、レーザー進行方向に設置)に加えて、レーザー進行方向から10度離れた方向にトムソンパラボラスぺクトロメーターを設置するため設計、製作を行った。 また、レーザー駆動イオン加速実験において、プラズマの温度を計測しつつ(X線スぺクトロメーターは既存のものを使用)3台のトムソンパラボラスぺクトロメーターにてイオンのエネルギー・価数の、空間分布のデータを取得することに成功した。これらのデータは、R5年度において解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度導入を予定していたトムソンパラボラスぺクトロメーターは、コロナの影響ですべての物品の価格が高騰し、かつ納期が非常に遅くなっていたにもかかわらず、価格低減のための設計の変更などを行ったうえ、R4年度最後に予定していた実験までに納入することができ、無事データを取得することができた。 金属の固体薄膜ターゲットを固体密度に近い状況にて、超高強度レーザーのピーク電場と相互作用するには、レーザーの時間波形をクリーニングし、プラズマの膨張を抑える必要がある。我々は、J-KARENレーザーシステムに昨年度導入したプラズマミラーを用いて、時間波形のクリーニングを行うことで、非常にターゲット(>数十nmレベル)を、膨張を抑えた形で照射することが可能となったが、それよりも薄い重金属ターゲット(金、及び銀の薄膜)の開発が必要となった。R4年度においては、非常に薄い、かつ丈夫なlow-Z材料であるアモルファスカーボンをサブストレートとして用いることで、そこに5nm程度の薄みの金をコートしたターゲットを開発し、ショットすることに成功した。 超高強度レーザーJ-KAREN-P照射実験においては、レーザーの時間波形をプラズマミラーにてクリーニングしたのち、厚みの異なる金属薄膜に照射し、イオンの価数とエネルギーかつ、プラズマの温度密度情報を含むX線領域の輻射のデータの取得に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度後半にJ-KARENシステムを用いた実験で取得したデータを解析することで、プラズマの温度・密度の情報とその際に加速されたイオンのエネルギー及び価数の分布の関係性を調査する。 実験中に精密に計測したショットごとの時間波形を用い、ターゲットのイオン化が始まる時刻の推定を行い、その時刻から流体シミュレーションを用いてターゲットの変化を追いかけ、そのアウトプットをParticle In Cell(PIC)シミュレーションに受け渡しシミュレーションを行う。今回の実験で取得された一連のデータ(電子温度、X線スペクトル、イオンの価数毎のスペクトル、透過光のスペクトル、反射光のスペクトル等)をすべてうまく再現するような条件を求める。 PICシミュレーションにおいては、プラズマ中の衝突過程のモデルとして、何を採用するのがいいのかがまだ明確にはなっていない。異なるモデル(あるいはEBITを用いて取得されたデータ)をPICに採用することで、どちらのモデルが、よりレーザープラズマ相互作用にて取得されたデータをよく再現するかを調査していく。
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