研究課題/領域番号 |
22H00127
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山下 雅樹 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (10504574)
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研究分担者 |
柿内 秀樹 公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 研究員 (20715479)
風間 慎吾 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 准教授 (40736592)
小林 雅俊 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 特任助教 (50824059)
小川 洋 日本大学, 理工学部, 助手 (20374910)
BUI TUANKHAI 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (50897337)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
2024年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2023年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2022年度: 19,500千円 (直接経費: 15,000千円、間接経費: 4,500千円)
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キーワード | 暗黒物質探索 / 液体キセノン検出器 / 暗黒物質 / 極低バックグラウンド / 宇宙線 / ニュートリノ / 標準模型を超える物理 / 極低放射能 |
研究開始時の研究の概要 |
暗黒物質は宇宙の約80%の物質を占めていると考えられているが,それが何であるか分かっていない。暗黒物質が発見されれば宇宙の解明に大きく前進をもたらす。XENON実験,またその後継機DARWIN実験はその暗黒物質を地下実験室にて直接探索を目的としており最も良い感度で実験を行い発見が期待される。本研究では,観測データのノイズを同定し,新規光センサーの開発を行い,検出器の高感度化を目指す。
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研究実績の概要 |
XENON実験およびその後継機DARWIN実験はWIMP暗黒物質直接探索を目的とする。暗黒物質と原子核の弾性散乱弾面積において最も良い感度で探索を行い、その発見が期待される。本研究では観測データの放射線ノイズを同定し,新規光センサーの開発を行い,検出器の高感度化を目指す。また、XENON-LZ-DARWIN(XLZD)コンソーシアムが形成され、より大きな国際協力体制が立ち上がった。 暗黒物資探索では10keV以下のキセノン原子核反跳信号を捉えるため,低エネルギー背景事象の理解 ・低減は重要となる。また、それは太陽アクシオンやAxion Like Particle探索でも重要となる。本研究ではキセノンガスに不純物として存在するトリチウムと検出器部材に由来する背景事象に焦点をあてる。 2020年6月に報告されたXENON1T超過事象は本研究を通して液体キセノン中に微量に含まれたトリチウム(~10^{-24} mol/mol)によって説明できることが分かった。XENONnTでは水素アウトガスの対策を行ったことで低エネルギーの事象超過は消え、他の検出器に比べ最も低いバックグラウンドを達成している。さらに、暗黒物質探索を行った。97.1日の観測データを解析し、その初期成果を論文にまとめた。WIMP質量100GeV/c^2では6.08×10^{-47}cm^2となりXENON1Tに比べすでに1.7倍良い結果が得られた。 光センサー開発では、低ダークカウントSiPMや、PMTとSiPMをハイブリッドに用いた光センサーの開発と低温での試験を進めている。今年度はハイブリッド光センサーの実現において鍵となる高速蛍光体の発光効率の測定を行い、期待される性能があることを確かめた。現在この結果をもとに試作機の開発を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)環境由来のトリチウムの測定のまとめ 柿内分担者らの開発したモルキュラーシーブス分離技術を用いて神岡坑内、イタリア・グランサッソで大気中における水、水素のサンプル採取が終了した。これらのすべのサンフプルのトリチウム量定量測定をまとめた。イタリア・グランサッソでの測定結果を示す。地上ではHTO:4.45+-0.17[TU], HT:1.0+-0.022)x10^5[TU] , 地下実験室ではHTO:3.3+-0.15[TU], HT:1.1+-0.015)x10^5[TU] (TUはTritium Unit 10^{-18})であった。イタリアにおいては初めての大気中HTの測定となる。 (2) XENONnTによる暗黒物質初期成果 XENONnT実験では真空引きやガスの循環により水素アウトガス対策を行った他、ラドンを軽減するオンライン蒸留塔をガスキセノンの純化に用いることにより(ガスモード)低エネルギー領域においてXENON1Tよりも1/5ほどのバックグラウンドを削減に成功し、LZやPandaX-IVなど他の実験に比べて最も低いバックグラウンド達成することが出来た。昨年度、論文で発表した新物理探索に加え、今年度はキセノン原子核反跳を用いたWIMP暗黒物質探索を行い論文にて発表を行った。有感領域4.2トンの液体キセノンをターゲットとし、2021年7月から11月までの間のうち97.1日の観測データを取得し、これは1.1 tonne・yearに相当する。8GeV/c^2のWIMP質量を仮定するとスピンに依存しないWIMP-核子の散乱弾面積の90%CL上限値として22.58×10^{-47}cm^2 が得られた。WIMP質量100GeV/c^2では6.08×10^{-47}cm^2となりXENON1Tに比べすでに1.7倍良い結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) XENONnTによるWIMP探索の継続 Science Run0(SR0)と呼ばれる初期段階ではラドン除去蒸留塔がキセノンガス循環システムでのみ導入されていたが、SR1以降では液体キセノン循環ラインにもフローパスが導入さた。これにより200SLPM相当(液にして~0.5L)のキセノンをラドン除去蒸留塔を通すことができ、さらに1/2程度ラドンバックグラウンドが減らせることができた(1μBq/kg)。この状態でさらにデータを取得し探索を行う。通常のWIMP探索だけでなく、エネルギー閾値を下げた低質量暗黒物質に特化した解析も進めていく。 (2) 液体キセノン中の水素の同定 本研究のトリチウム比放射能から求めたXENON1Tでの液体キセノン中の水素量は数pptレベルとなり、従来のガスクロマトグラフィーを用いた測定では感度が3桁以上足りない。そこで、新規不純物測定を小林を中心として進めている。水素透過膜と残留ガス質量分析計を組み合わせ、高感度化を目指す。 (3) DAWINに向けた光検出器の開発 SiPM、ハイブリッドセンサーの低温測定や部材の放射能測定を進める。ダークカレントの測定では宇宙線の影響を防ぐために神岡坑内にて行う。
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