研究課題/領域番号 |
22H00130
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井岡 邦仁 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (80402759)
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研究分担者 |
樫山 和己 東北大学, 理学研究科, 准教授 (10785744)
高橋 龍一 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (60413960)
柴田 大 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (80252576)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,730千円 (直接経費: 32,100千円、間接経費: 9,630千円)
2024年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2023年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2022年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 高速電波バースト / マルチメッセンジャー / 高エネルギー / 突発天体 / 宇宙論 |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙で最も明るい電波の突発現象である高速電波バースト (Fast Radio Burst; FRB) の標準モデルを構築し、FRB を道具として用いて宇宙の進化を探る「FRB 宇宙論」の理論的基盤を築くことが目的である。そのために、ガンマ線バーストのモデルを応用して、FRB が生まれるのが、マグネター(超強磁場中性子星)の磁気圏の中なのか、外なのかに決着をつける。また、FRB の観測から求まる観測量を統計的に他の観測と組み合わせて、宇宙の進化を決める手法を開発する。それらをもとに、FRB からのX・γ線、重力波やニュートリノ等のマルチメッセンジャーを予言する。
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研究実績の概要 |
マグネターのX線バーストでは、表面付近の地震か磁気リコネクションで発生したエネルギーはすぐに熱化し、光子と電子陽電子のプラズマ(火の玉)を形成する。ところが、単純な電子陽電子の火の玉を考えると、FRB のエネルギーを説明できないことが分かった (Ioka 2020)。電子陽電子の火の玉の進化を計算してみると、電子陽電子は膨張するにつれ温度が下がり、対消滅していく。ほとんどのエネルギーはX線となり、これは観測されたX線バーストを説明する。しかし、脱結合した後に残される電子陽電子のエネルギーは、観測された FRB のエネルギーより桁で小さい。何らかの方法でエネルギーを保持する必要がある。一つの方法は、GRB の時のように、バリオンが混ざる可能性である。バリオンが含まれるとバリオンに付随する電子が対消滅せずに残り、光子を長い間散乱してくれる。その間に放射圧がバリオンを加速し FRB に使えるエネルギーが増加する。我々はマグネターのX線バーストの時にバリオンが含まれるとFRBを説明するのに十分大きなエネルギーになることを明らかにした(Wada & Ioka 2023)。さらに、加速には共鳴シンクロトロン散乱が非常に重要であることを見つけた。加速した結果、十分大きなローレンツ因子になることも分かった。 FRBの光子が磁気圏中の電子陽電子とどのように相互作用するか、という問題を明らかにするために、磁場中の電子陽電子対プラズマでの協同トムソン散乱を計算した。 FRBの分散量度とダークマターの間の相関を取ると、宇宙論パラメータやガス質量比に対する制限が得られることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
火の玉の加速にとって共鳴シンクロトロン散乱が非常に重要であるであることが分かった。これはガンマ線バーストなどの過去の研究ではあまり気付かれておらず、全く驚きの発見であった。この過程のおかげで、火の玉にバリオンが混じっていない場合でも、もっとも効率的に共鳴シンクロトロン散乱によって加速されれば FRB のエネルギーにギリギリ届くことも分かった。 磁場中の電子陽電子対プラズマでの協同トムソン散乱の研究では、最初、電子と陽電子の電流がキャンセルして散乱が著しく抑制されると予想して計算を進めたが、得られた答えは予想を裏切り、抑制は起こらないことが分かった。これを元に誘導コンプトン散乱の断面積を予想できた。今後この予想を数値的計算と比較していけるようになったので、大きな収穫である。
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今後の研究の推進方策 |
マグネターのX線バーストでは、表面付近の地震か磁気リコネクションで発生したエネルギーはすぐに熱化し、光子と電子陽電子のプラズマ(火の玉)を形成する。ところが、単純な電子陽電子の火の玉を考えると、FRB のエネルギーを説明するのが簡単ではないことが分かった (Ioka 2020)。電子陽電子の火の玉の進化を計算してみると、電子陽電子は膨張するにつれ温度が下がり、対消滅していく。ほとんどのエネルギーはX線となり、これは観測されたX線バーストを説明する。しかし、脱結合した後に残される電子陽電子のエネルギーは、観測された FRB のエネルギーより桁で小さい。エネルギーを表面から運ぶ一つの方法は、GRBの時のように、バリオンが混ざる可能性である (Wada & Ioka 2023)。もう一つの方法は、火の玉ができるときに自然に発生するアルフベン波である。太陽のコロナ加熱のように、アルフベン波は火の玉の中を伝搬する間に音波を励起してエネルギーの一部を火の玉に受け渡す可能性がある。我々はその三波共鳴の成長率を、磁場エネルギーが卓越する場合も含めて求めることに成功した(Ishizaki & Ioka in preparation)。一方、誘導コンプトン散乱も起こる可能性があり、統一的に考慮する必要がある。今後は、磁場が卓越する場合の誘導コンプトン散乱を考察し、その成長率を求める。解析的方法と数値的方法(Particle-In-Cell法)の値を比較し、アルフベン波崩壊の全体像を掴む。
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