研究課題/領域番号 |
22H00140
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 (2024) 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 (2022-2023) |
研究代表者 |
三島 賢二 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 特任准教授 (20392136)
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研究分担者 |
岩下 芳久 京都大学, 複合原子力科学研究所, 特任准教授 (00144387)
不破 康裕 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究職 (00817356)
猪野 隆 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 講師 (10301722)
吉岡 瑞樹 九州大学, 先端素粒子物理研究センター, 准教授 (20401317)
北口 雅暁 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 准教授 (90397571)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
40,300千円 (直接経費: 31,000千円、間接経費: 9,300千円)
2024年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2023年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2022年度: 21,060千円 (直接経費: 16,200千円、間接経費: 4,860千円)
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キーワード | 中性子寿命 / 中性子崩壊 / CKM行列 / ビッグバン元素合成 / ベータ崩壊 |
研究開始時の研究の概要 |
中性子は880.2+/-1.0秒で陽子、電子、反ニュートリノの3体にβ崩壊する。その寿命は素粒子、原子核、天文分野における重要な値であるが、現在報告されている中性子寿命はその測定手法により8.5秒(4.0σ)の大きな乖離があり、“中性子寿命問題”と呼ばれている。この乖離が単なる実験の間違いなのか、あるいは未知の現象によるものなのか、大きな議論を呼んでいる。本申請はJ-PARC大強度パルス中性子を用い、中性子崩壊からの電子を測定するという新しい手法により、この問題の解決を目指す。中性子崩壊からの電子の放出方向は中性子の偏極方向に偏りを持つため、中性子偏極を制御することで実験の高度化を行う。
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研究実績の概要 |
中性子は最も単純な原子核の一つであり、880.2 +/- 1.0秒で陽子、電子、反ニュートリーノの3体にベータ崩壊する。その寿命は素粒子、原子核、天文分野における重要なパラメーターである。だが、2024年4月現在報告されている中性子寿命はその測定手法により9.5秒(4.6σ) と大きく乖離しており、“中性子寿命問題 (Neutron Lifetime Puzzle)”として大きな未解決問題となっている。この測定手法による乖離が単なる実験の間違いなのか、あるいは新しい物理現象を示唆するものなのか、大きな議論を呼んでいる。本研究はJ-PARCの大強度パルス中性子ビームラインにおいて既存の手法とは異なる測定方法により測定し、この問題の解決を目指すものである。本申請では新たに中性子偏極を用いた解析を導入することで、中性子寿命を精度2秒で決定することを目指す。 本実験では長さ1メートルのガス検出器にスピンフリップチョッパー(SFC)という装置を用い、40cm長に整形した中性子バンチを導入し、中性子バンチが完全にTPC内に存在する時のみ計数をする。2023年度は改良したSFCの性能試験を行った。アップグレードによりビーム量の2.8倍の増加が確認され、その結果を論文に投稿した[K. Mishima, arXiv:2312.12959]。アップグレード後の物理測定により、これまでに取得した統計精度の合計は1.4秒に到達した。また偏極中性子を利用したバックグランド調査実験のための偏極保持用電磁石の設計と作成を行った。電磁石は十分な性能が出ていることが確認され、実験装置への実装を進めている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
偏極保持用磁石は2022年中に作成する予定であったが、設計及び部品調達の遅れのため、作成が2023年度にずれ込んだ。
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今後の研究の推進方策 |
現在の寿命実験精度は中性子バンチ起因の背景事象、つまりバンチ状に導入された中性子がTPC動作ガスと散乱して起こる背景事象が律速している。この背景事象は事前のシミュレーションではβ崩壊事象数の1%と予想されていたが、実測では5%と予想の4倍ほどの過剰が存在しているおり、その過剰な背景事象の影響を評価する際の任意性が10秒を超える大きな不確かさの要因となっている。この不確かさを抑えていくことが本研究の鍵となる。本研究ではSFCからの中性子偏極を保持し、その偏極中性子の崩壊からの電子を測定するという新しい手法により、この問題の解決を目指す。中性子崩壊からの電子の放出方向は中性子の偏極方向に偏りを持つため、中性子偏極を制御することにより実験の高度化を行う。 2023年度に中性子偏極制御用電磁石の設計と作成が完了した。2024年度にはこの電磁石を実装し、性能を評価を行う。十分な性能が得られたことを確認した後、30日程度の物理測定を行う計画である。バックグラウンド源の特定が可能であった場合、その根本的な除去を行う。
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