研究課題/領域番号 |
22H00153
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分16:天文学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
住 貴宏 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (30432214)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,380千円 (直接経費: 32,600千円、間接経費: 9,780千円)
2024年度: 13,910千円 (直接経費: 10,700千円、間接経費: 3,210千円)
2023年度: 13,650千円 (直接経費: 10,500千円、間接経費: 3,150千円)
2022年度: 14,820千円 (直接経費: 11,400千円、間接経費: 3,420千円)
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キーワード | 系外惑星 / 重力マイクロレンズ / マイクロレンズ |
研究開始時の研究の概要 |
世界で初めて近赤外線での重力マイクロレンズ系外惑星探査を行うため、世界最大級の近赤外線カメラを搭載した1.8m広視野望遠鏡を南アフリカ共和国に建設中で、2022年度中に完成し観測を開始する。近赤外線では、従来の可視光に比べて、星間減光が強い銀河系中心近くを観測可能で、中心に近いほど星数密度が高く、惑星発見数が増える。また、星数密度が高い領域での惑星頻度を世界で初めて見積もり、環境による惑星頻度の違いを検証する。本研究期間内に、冷たい系外惑星および浮遊惑星を数十個発見し、存在量、質量関数を見積もり、これらの形成過程を解明する。また、NASAのRoman衛星の観測領域を最適化する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、1.8mPRIME望遠鏡が南アフリカ天文台SAAOサザーランド観測所で完成した。主焦点部は、ABCが開発中の分光器へ光を送る光ファイバーを設置可能な設計となっている。さらに、NASA/メリーランド大学と共同で開発した広視野赤外線カメラを、PRIME望遠鏡にインストールした。2022年度は、本経費をもって研究員1名を雇用し、これらの作業に従事した。また、大学院生を派遣して、望遠鏡のインストール、テスト観測およびコミッショニングを行った。 前年度インストールした赤外線カメラの赤外線検出機2枚で不具合があったので、2023年度は、メリーランド大学/NASAと共同でこれを補修した。これにより4枚全てが正常に動く様になった。その後、光学系の再調整を行い、予定通り定常観測を開始することができた。2023年度は、本経費をもって研究員1名を雇用し、これらの作業に従事した。また、大学院生を派遣して、コミッショニングと観測を行った。また、データ解析バイプラインの開発を進め、検出機の非線形性を補正した画像を生成できる体制を整えた。 また、ニュージーランドのMOA-II望遠鏡による観測は継続し、今後PRIMEの成果と比較できるように系外惑星サンプルを順調に増やした。2022年度は新たに7個、2023年度は6個の系外惑星候補を発見した。マイクロレンズでは、ハビタブルゾーンよりやや外側の冷たい、地球質量までの軽い惑星に感度がある。これらの惑星は、惑星形成過程を理解する上で重要で、他の手法での観測と相補的である。今回の観測では、これらの惑星サンプルを増やす事ができた。これにより、岩石惑星を含む惑星の質量関数をより正確に見積もることができるようになり、PRIME望遠鏡の結果との比較が行えるようになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、2022年度中に、1.8mPRIME望遠鏡を南アフリカ天文台SAAOサザーランド観測所で完成させて、NASA/メリーランド大学と共同で開発した広視野赤外線カメラを、PRIME望遠鏡にインストールし、観測を開始する予定であった。実際にこれらのインストールは完了できたが、インストールした赤外線カメラの赤外線検出機2枚で不具合があり、残りの2枚でしか観測できなかった。これは、カメラをNASAから南アフリカに輸送中に振動などの理由で、1枚は検出機の読み出し回路に不具合が発生、もう1枚ではケーブルの接触が不安定となったことが原因である。そこで、2023年度6月に、メリーランド大学/NASAと共同で、読み出し回路とケーブルを交換し、修理した。これにより4枚全てが正常に動く様になった。その後、光学系の再調整を行い、定常観測を開始することができた。これにより約1年の遅れが生じたが、それ以外は、順調に進んでおり、観測を開始できたことから、当初の目標は達成できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
前述の様に、当初予定より観測開始が約1年遅れているが、それ以外は当初予定通り進める。2023年度中に、本格観測を開始したが、2024年度はそれを継続する。銀河系バルジ の約35平方度内の星約2億個(H<18.5mag)を60-120分に1回の高頻度サーベイをする。本研究期間中、日本人メンバー(代表者、助教2、研究員2、大学院生8名程度)が現地へ行き、観測、即時解析、アラ ート送信を行う。将来的に、現地研究者と協力して、リモート観測、自動観測へと段階的に移行する準備もする。また、他のパートナー機関(SAAO, NASA, ABC)の割り当て時間の観測も実行していく。これまでに、データ解析バイプラインの開発を進め、検出機の非線形性を補正した画像を生成できる体制を整えた。今後は、生成した画像を、Difference Image Analysis (DIA)で解析する。あらかじめ取得されていたseeingが良くシグナル/ノイズ比の高い画像をリファレ ンスとし、各観測画像からこれを引き算すると、変光した天体のみが残り、発見し易く、測光精度が高い。バルジの様な星密集領域で特に有効で、研究協力者I.Bond氏 (Massey大学, NZ)がMOA-IIで18年間運用しているパイプラインを移植する。PRIMEは、年間約200TByte(圧縮後)もの大量のデータを取得する。現地に導入した、 サ ーバー4台で即時解析し、イベント検出後直ちにアラートを世界中に発信し追観測を促すシステムを作る。MOA-IIでは、多数の偽検出から観測者が目視でイベントを選んでいたが、最近、機械学習を用いて絞り込むシステムを導入した。これをPRIMEにも導入する。レンズ天体が1個の単純な光度曲線からのズレが観測されると、即座に連星レンズモデルでフィットして、惑星系かを判断しアラートを出すことで、惑星発見数を増やす。
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