研究課題/領域番号 |
22H00156
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分16:天文学およびその関連分野
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
松浦 周二 関西学院大学, 理学部, 教授 (10321572)
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研究分担者 |
津村 耕司 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (60579960)
佐野 圭 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (70802908)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
43,030千円 (直接経費: 33,100千円、間接経費: 9,930千円)
2024年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2023年度: 16,380千円 (直接経費: 12,600千円、間接経費: 3,780千円)
2022年度: 20,020千円 (直接経費: 15,400千円、間接経費: 4,620千円)
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キーワード | 宇宙背景放射 / 赤外線 / ロケット / ロケット実験 |
研究開始時の研究の概要 |
赤外線の銀河系外背景放射を観測することで銀河形成以前の時代に最初に生まれた星々や原始ブラックホールの残光を捉えることを目指し,NASA観測ロケットを用いた国際共同実験CIBER-2を実施する.第1回打上げは2021年6月に成功したが,今回の実験では科学目的の達成に不十分であることが明らかになった.本研究では,パラシュート回収したCIBER-2の観測装置を改修・再利用により繰り返し打上げ実験を行うことで観測精度を上げ,謎に包まれた銀河系外背景放射の解明と初期天体の検出に挑む.
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研究実績の概要 |
我々は,NASAの観測ロケットを用いた国際共同実験CIBER: Cosmic Infrared Background Experiment により近赤外域の銀河系外背景放射を観測した結果,その強度と空間的ゆらぎが通常銀河の積算光から超過していることを発見した.この超過は未知天体の存在を示唆しており,それには宇宙初期の原始ブラックホールが寄与している可能性がある.本研究ではCIBERより一桁高い感度で超過原因を特定しうる新たなロケット実験CIBER-2を実施する.第1回の打上げは2021年6月に実施したが,科学目的の達成には不十分であり,本研究では観測装置の改修・再利用により繰り返し実験を行い精度向上をはかる. 2022年度は,第2回実験にむけてこれまでに確認された観測装置に関する課題を解決した.第1回実験後から顕著になった望遠鏡の主副鏡の表面劣化は基材のアルミ合金上にコートした銀の劣化によるものと確認されたことから,主副鏡を再切削加工したのち,劣化が少ない銀合金を新たなコート材として施工した.フライト品へのコート施工に先立ち試作サンプルを用意し経時劣化を調べたところ,銀と比較して銀合金は劣化が少ないことが示された.日本で組立て調整した望遠鏡は,ロケット実験のとりまとめを行うロチェスター工科大学(RIT)へ輸送し,これを担当する日本チームが現地へ出向いてレンズ光学系や検出器と組合せ冷却光学試験を行った.様々な部品の遮光性能や検出器のノイズ性能を向上させ,すべての課題をクリアできたことから,第2回実験のためNASA Wallops Flight Facilityでの振動試験と総合動作試験を行ったのち,2023年3月にロケット打上げ基地のホワイトサンズ実験場へ移動し,当初の予定どおり第2回の打上げ準備を終えることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1回実験における主要な課題の一つには,アルミ合金製の望遠鏡主副鏡の表面に施工した銀のコートが劣化し光学性能を低下させており,これに対して鏡の再切削加工によるコート剥がしののち劣化が少ない銀合金のコートを新規に施工した.改修が終了した望遠鏡をロチェスター工科大学へ輸送し,開発を担当した日本チームが現地へ出向き,レンズ光学系の組込みを行ったのち,低温での光学性能評価を行うことができた.また,第1回実験で問題となったロケット筐体からの熱放射の混入は,問題となる箇所を特定することができたため遮光措置をとるとともに,性能を向上させた熱放射カットフィルターの導入により解決することができた.これにより,当初予定していたとおり,2023年の早期に第2回実験を行うという目標を達成することができた.ただし,新たに導入した銀合金のコートは,試作サンプルを作成する炉とフライト品の鏡にコートする炉で大きさが違い,同じ作成パラメータでも違う出来栄えになったことから,複数回の切削とコートの過程を踏まざるを得なくなり,これにより予定が2-3ヶ月遅延した.プロジェクトのスケジュールへの影響もあり打上げ予定は2023年度になったが,おおむね予定通りと言える.
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今後の研究の推進方策 |
ホワイトサンズ実験場における第2回のロケット打上げ準備は2022年度内に終えることができたことから,打上げは2023年4月に実施予定である.2023年度は,打上げ後にパラシュート回収した観測装置を含むペイロード部をNASA Wallops Flight Facilityへ移送し,その健全性を確認する.その後,観測装置はロチェスター工科大学へ移送し,日本チームは現地メンバーと協力し開発の主担当である光学系の分解・検査を実施する.観測装置に破損がある場合は,研究メンバーを米国へ配し観測装置の修復に全力を尽くすとともに,日本へ搬送し修理を行い,より完成度の高い装置の状態で第3回実験を行うことを目指す.装置開発と並行して第2回実験での観測データの解析を国際チームで分担して行い科学成果を得る.
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