研究課題/領域番号 |
22H00157
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分16:天文学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋市立大学 (2024) 国立天文台 (2022-2023) |
研究代表者 |
秦 和弘 名古屋市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (60724458)
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研究分担者 |
小川 英夫 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 客員教授 (20022717)
小山 翔子 新潟大学, 自然科学系, 助教 (20909759)
新沼 浩太郎 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30434260)
紀 基樹 工学院大学, 工学部, 講師 (70531234)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,720千円 (直接経費: 34,400千円、間接経費: 10,320千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 37,700千円 (直接経費: 29,000千円、間接経費: 8,700千円)
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キーワード | ブラックホール / 相対論的ジェット / 電波天文学 / 超長基線電波干渉計 |
研究開始時の研究の概要 |
巨大ブラックホール(BH)から噴出する相対論的ジェットの生成機構の解明は現代天文学における究極的課題の1つである。本研究では東アジアVLBIネットワーク(EAVN)をミリ波86GHz帯で展開し(EAVN-high)、また230GHz帯国際VLBI観測網(EHT)によるBHの観測とも連携することで、世界に先駆けてブラックホールジェット加速領域の観測的解明を試みる。そのために今回、水沢局を含むVERA2局に86GHz帯広帯域受信機を新規整備する。そして得られた加速プロファイルと理論モデルを比較し、駆動メカニズムを議論する。
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研究実績の概要 |
巨大ブラックホールから噴出するジェットの生成・収束・加速機構の解明は現代天文学における重要課題の1つである。本研究では東アジアVLBIネットワークをミリ波86GHz帯で展開し、M87を含む近傍の活動銀河核を超高解像度観測し、世界に先駆けてブラックホールジェット加速領域の観測的解明を試みる。そのために今回、VERA水沢局などに86GHz帯広帯域受信機を新規整備する。得られた加速プロファイルを理論モデルやシミュレーションと比較し、駆動機構のキーパラメータを議論する。 2022年度は、VERA水沢アンテナの86GHz帯における性能評価を中心に行った.まず、大阪公立大にて86GHz常温受信機を製作し、年度前半までに水沢アンテナに常温受信機を搭載した.年度後半からは、常温受信機を用いて宇宙を観測し、木星やSiOメーザーといった天体からの信号を受信し、VERAアンテナとして86GHz帯のファーストライトに成功した.そして天体の観測データをもとに、大気の光学的厚みや、アンテナの開口能率など86GHzにおける性能評価を実施した.その結果、大気光学的厚みは約10%程度と、観測条件としては非常に良好な結果が得られた.一方開口能率については、最大で約25%程度という測定結果を得た.これはVERAアンテナの鏡面精度から予想される期待値とよく一致しており、86GHz帯でも水沢アンテナが十分に機能することを実測から確認することができた. 上記の試験と並行して、冷却受信機の製作に向けた部品調達も開始した.ただ、冷凍機の選定の判断が今年度に得られた観測データだけでは不十分だったため、冷凍機の購入は引き続き観測データを蓄積し、2023年度へ繰り越す判断をした.進捗全体としては、測定データの更なる蓄積が必要ではあるが、すでにエンカレッジングなデータが得られており、今後のプロジェクト推進に向け大きな弾みとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクト初年度である2022年度は、VERA水沢アンテナの86GHz帯における性能評価を中心に行った.まず、大阪公立大にて86GHz常温受信機を製作し、年度前半までに水沢アンテナに常温受信機を搭載した.そして年度後半からは、搭載した常温受信機を用いて宇宙を観測し、木星やオリオン座SiOメーザーといった天体からの信号を受信し、VERA単一鏡として86GHz帯のファーストライトに成功した.そして天体の観測データをもとに、86GHz帯における大気の光学的厚みやシステム雑音温度、アンテナのポインティングやフォーカス調整、開口能率などアンテナの86GHzにおける性能評価を実施した.その結果、大気の光学的厚みは観測条件の良い冬シーズンにおいて約10%程度、システム雑音温度としては(常温受信機において)800K程度と、観測条件としては非常に良好な結果が得られた.一方開口能率については、最大で約25%程度という測定結果を得た.これはVERAアンテナの鏡面精度から予想される期待値とよく一致しており、86GHz帯でも水沢アンテナが十分に機能することを実測から確認することができた. 常温受信機を用いた試験と並行して、我々は冷却受信機の製作に向けた部品(周波数ミキサ、低雑音増幅機、周波数逓倍器)の調達も開始した.ただ一方で、冷凍機の選定の判断が今年度に得られた観測データだけでは不十分だったため、冷凍機の購入は引き続き観測データを蓄積し、2023年度へ繰り越す決断を下した. 進捗全体を通してまとめると、測定データの更なる蓄積が必要ではあるものの、すでにエンカレッジングなデータが得られたことは、今後のプロジェクト推進に向け非常に大きな弾みとなった.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題初年度は常温受信機の製作及びそれを用いた観測が順調に進み、水沢局において86GHz帯におけるアンテナの性能評価が順調に始まった.一方で、測定精度の向上にはまだデータ量が十分とはいえず、引き続き常温受信機を用いた観測が必要である. そこで今後は、常温受信機を用いた較正天体の測定を継続し、アンテナの開口能率やビームパターンの詳細な決定を目指す.またこうした性能評価測定を、水沢だけでなく、VERA石垣局においても展開する.そして、可能であれば野辺山45m局または韓国KVN局と協力して86GHzVLBI試験を実施し、VLBI信号(フリンジ)の検出にも挑戦する. こうした常温受信機を用いた測定と並行して、冷却受信機の開発・製作も本格化させる.そのために使用する冷凍機を選定・購入し、実験室での性能評価に着手する.また、86GHz帯、43GHz帯をVERAで同時受信できるような光学系の検討も開始し、長期的な将来展望も見据えた取り組みの検討も行う.また、冷却受信機を用いた本格観測に備えて、M87ジェットの理論的研究も進めておく.
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