研究課題/領域番号 |
22H00167
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
朴 進午 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70359199)
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研究分担者 |
藤江 剛 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震発生帯研究センター), センター長 (50371729)
鶴 哲郎 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (80371730)
山口 飛鳥 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (30570634)
木下 正高 東京大学, 地震研究所, 教授 (50225009)
山野 誠 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (60191368)
鹿児島 渉悟 富山大学, 学術研究部理学系, 特命助教 (70772284)
高畑 直人 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (90345059)
佐野 有司 高知大学, 海洋コア国際研究所, 特任教授 (50162524)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2023年度: 22,620千円 (直接経費: 17,400千円、間接経費: 5,220千円)
2022年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | アウターライズ / 大規模流体循環 / 時空間スケール / 大規模流体循 |
研究開始時の研究の概要 |
海溝に沈み込む前のプレートの海洋地殻を断ち切る正断層は、しばしば海溝型巨大地震と連動し、M8クラスの巨大地震と津波を引き起こす。本研究では海洋地質学、地震学、地球物理学、地球化学、資源工学の壁を超えた分野横断的アプローチにより、これまで日本海溝アウターライズの一部の断層破砕帯で指摘された大規模な流体循環が日本海溝アウターライズに広く分布しているかを調べ、流体循環の時空間スケールを明らかにする。さらに、大規模な流体循環がアウターライズ巨大地震に与える影響を解明する。
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研究実績の概要 |
1.日本海溝のアウターライズで反射法探査を行い、大規模アウターライズ地震断層の地殻構造と物性を調べた。アウターライズに発達する正断層群の活動性を評価するため、個々の活断層を対象にSlip tendencyを算出した。三陸沖のアウターライズにおいて同一測線上で計4回観測された反射法探査データを用い、減衰特性のタイムラプス解析を行った。その結果、東北地方太平洋沖地震の前後に最上部マントル付近で減衰特性の時間変化が見られた。過去十数年間の構造探査や地震観測研究に基づき、日本海溝に沈み込む太平洋プレートの実態について、アウターライズ断層による構造変質やその不均質性に注目して論文としてまとめた。
2.新青丸KS-23-6次航海に乗船し、日本海溝アウターライズの試料採取を行った。日本海溝アウターライズから過去に採取されたコアのCT分析およびサンプリングを行った。海溝堆積物試料を用いた摩擦実験を進めた。日本海溝アウターライズ上での短波長の熱流量変動と海洋地殻及び堆積層の構造を対比し、地殻の破砕と流体循環の発達過程を推定した。また、日本海溝海側の正断層系での熱流量測定を行うことで、断層付近の熱流量異常を検出し、流体循環モデルを構築した。
3.新青丸KS-23-6次航海を通じて東北沖アウターライズ海域で海底堆積物・間隙水を採取し、ヘリウム同位体比などの希ガス同位体組成を分析した。これまでにヘリウム同位体比に異常が見られたのと同じ場所で今回も異常が見られ、大規模流体循環の上昇流が継続していることが確認できた。ヘリウム同位体比の空間分布は、海底下に存在する流体ソースの多様性を反映している可能性がある。 また、西南日本の南海トラフ沈み込み帯の熊野海盆において掘削されたIODP Expedition 348のサイトC0002で採取されたカッティングスの包有物に含まれるヘリウム同位体データを解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた調査航海により新規データが取得されており、既存データを活用した研究も進んでいる。また、アウターライズに発達する正断層群の構造、活動性、減衰特性などが明らかになりつつあり、当初の研究計画はおおむね順調に進展している。正断層付近では熱流量異常が検出され、熱流量変動に基づく流体循環モデルが構築されている。アウターライズ海域で採取した海底堆積物・間隙水の希ガス同位体組成を分析した結果、これまでヘリウム同位体比の異常が発見されたのと同じ場所で今回も異常が見られ、大規模流体循環の上昇流が継続していることが確認できた。また、ヘリウム同位体比の空間分布は、海底下に存在する流体ソースの多様性を反映している。
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今後の研究の推進方策 |
1.2024年5月~6月に日本海溝アウターライズで海洋研究開発機構(JAMSTEC)研究船「かいめい」の大容量エアガンアレイと海底地震計(OBS)を用い、屈折波・広角反射波データを取得し、海洋地殻第3層や最上部マントルのVp/Vs比を推定する。JAMSTEC研究船「かいめい」の大容量エアガンアレイと長距離ストリーマーケーブルを用い、日本海溝アウターライズにおける南北方向の断層破砕帯を横切る測線上で新規の反射法探査(MCS)データを取得し、断層の高精度イメージング処理(PSDM)を行うとともに、モホ面の反射強度を推定する。また、岩手沖で1997年、2009年、2011年、2023年に同一測線(SR101、A3obs、2011D19、2023D19)で観測されたMCSデータを用い、海洋性地殻や最上部マントルの減衰構造の時間変化を解析する。 2.これまで日本海溝アウターライズで採取した堆積物試料を高知コアセンターにおいてXCT分析・物性・組成・年代分析を行うことによりアウターライズ地震によって堆積したと考えられるイベント層の多角的な解析を行う。 3.これまで日本海溝アウターライズで得られた熱流量測定データを解析し、流体循環のモデリングや他の観測データとの対比により、海洋地殻内流体循環の発達過程を解明する。また、他の正断層系の結果を参考に、アウターライズの流体循環様式を明らかにする。 4.これまで日本海溝アウターライズで採取した堆積物・海水試料を分析し、アウターライズの流体循環の経路や発達様式を推定する。また、他の流体循環系の結果を参考に、アウターライズの流体循環モデルを確立する。 5.これまでの研究成果を総括し、アウターライズで海洋とマントルを結ぶ大規模流体循環の時空間スケールを推定するとともに、仮説「マントルの間隙水圧変動がアウターライズ巨大地震を規定する」について総合的に考察する。
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