研究課題/領域番号 |
22H00175
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三村 耕一 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80262848)
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研究分担者 |
篠崎 彩子 北海道大学, 理学研究院, 助教 (80570506)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
43,420千円 (直接経費: 33,400千円、間接経費: 10,020千円)
2024年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
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キーワード | 生命の起源 / 有機物 / 高圧反応 / 沈み込み帯 / 高温高圧 / 生命の発生 / 生命誕生 / 沈み込み帯浅部 / 高温高圧反応 / 化学進化 |
研究開始時の研究の概要 |
地球生命はどこで誕生したのだろうか?本研究では、「生命誕生の場」として「沈み込み帯浅部」を提案し、その妥当性と重要性を評価する。初期地球の沈み込み帯浅部は、”隕石などの地球外物質によって地球に供給された有機物を集積し、それら有機物を高温高圧環境で反応させ、生成した有機物を細胞状の小胞へと化学進化させるシステム”を持つと考えている。本研究では、このシステム中で特に重要な高温高圧での有機物反応を実験的に確認し、このシステムが「生命誕生の場」として成立するか否かを検証する。
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研究実績の概要 |
『沈み込み帯』が「生命誕生の場」として成立するか否かを検証するために、高温高圧実験に必要な高圧反応容器の温度コントロール手法、生成物の回収方法、LCMSの分析条件の検討を行った。 温度コントロール方法については、高圧発生用のシリンダに直接巻き付けたバンドヒータによって熱を与えた。温調器を使いヒータに流す電流値をコントロールしてシリンダの温度を制御した。その結果、目的温度の±3℃でシリンダ内試料室の温度をコントロールすることが可能となった。さらに、反応後の試料を急冷するために、反応容器を冷却するための装置も開発した。シリンダを覆うように密着するブロックを作成し、反応後、ブロックに銅製の冷却板をねじ止めすることで試料の急冷に成功した。これにより、10分間で試料を220℃から25℃に冷却させることに成功した。 生成物を回収するために、Oリングを介してシリンダに密着可能な回収ジグを作成し、そのジグを通してドリルでシリンダ内部の試料を掘削できる手法を開発した。また、掘削時にジグ内部に高純度水を注入することで、回収された試料を直接水に溶解させ、試料の損失を低減させた。 LCMSの分析条件については、アミノ酸類(アミノ酸モノマー、オリゴマーを含む)とリン脂質類の分離カラム種類の選定と溶離液組成の決定を行なった。分離カラムとしては、すべての対象物質について逆相カラムを選定した。特に、リン脂質類に対しては、カラム内側への吸着を防ぐためにメタルフリーのカラムを選定した。さらに、溶離液はアミノ酸類については、正イオンでの検出が適当であるためギ酸を含む溶液、リン脂質類については陰イオンでの検出が適当であるため、酢酸アンモニウムを含む溶液を使用することで良好な分析が可能なことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の研究計画としては、高圧反応容器の温度コントロール手法、生成物の回収方法、LCMSの分析条件の検討、幾つかの温度条件におけるアラニンの高圧実験の実施をあげていた。2022年度の研究実績に示したように、これらの検討は既に終えている。さらに、この実験条件を使って、「アラニン + サーペンティン + 水」を出発物質とした0.25 GPa、200℃で4時間保持の実験結果を得ている。この実験によると、アラニンが38%残存し、ジアラニンと環状アラニンがそれぞれ0.025 mol%、0.1 mol%生成したことがわかった。この結果は、先行研究の水を含まない系でのアラニンの高圧実験の結果に比べ、高いアラニンの残存度を示すものであった。これらの実験の比較は水の存在がアラニンの分解を効率的に妨げることを示唆しており、反応場において水の存在が重要であることが明らかになった。2022年度で行った研究内容は当初の研究計画に沿ったものであり、研究の進捗状況はほぼ順調である。また、2022年度の研究結果は2023年度以降の研究推進に大きく役立つものである。
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今後の研究の推進方策 |
いくつかの温度条件でアミノ酸の高圧実験を行い、各温度におけるアミノ酸分解速度を算出して反応速度論的考察を行う。さらに、アミノ酸が2分子結合した二量体の生成率とその単量体の分解率の相関を調べ、単量体の分解速度から二量体の生成速度を推定する。これにより、重合体が反応場から流体とともに移動する際の重合体濃度の時間変化を見積もり、反応場からその上部の堆積層への重合体の運搬が可能か否かを判断する。 現在の地球で見られる沈み込み帯において、深部から地表付近への流体の動きが活発なのは深さ20 km程度までである。そのため、実験の温度圧力条件は<220℃、<0.5 GPaとする。反応速度を考慮した議論を行うため、圧力は0.25 GPaと0.5 GPa、温度は160、180、200、220℃の条件でのデータ取得を目指す。試料としては、アラニン+サーペンティン+水の混合物を使用する。アラニンは隕石から検出される主要アミノ酸であり、サーペンティンは隕石を構成する主要鉱物である。初期地球には、現在よりも高い頻度で多量の隕石が供給されていたと考えられており、そこに含まれる有機物や鉱物は現在入手可能な隕石と大きくは違わないと考えて良い。高圧反応には既に開発済みの反応容器を使い、回収した試料を主に液体クロマトグラム質量分析計(LCMS)で分析する。LCMSの分析条件は既に検討済みであり、逆相カラム(C18)を使用する。溶離液には0.1%ギ酸水溶液と0.1%ギ酸を含むアセトニトリルの混合溶液を使用し、この混合率を時間変化させることとする。さらに、アラニンを出発物質とした場合、高圧実験の試料が含むと期待される化学種はアラニン、ジアラニン、環状アラニンである。それら化学種の定量は、試料を反応容器から回収する際に内部標準試薬としてノルバリンを添加することによって行う。
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