研究課題/領域番号 |
22H00180
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山崎 大輔 岡山大学, 惑星物質研究所, 教授 (90346693)
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研究分担者 |
辻野 典秀 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, テニュアトラック研究員 (20633093)
芳野 極 岡山大学, 惑星物質研究所, 教授 (30423338)
坂本 直哉 北海道大学, 創成研究機構, 准教授 (30466429)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
43,420千円 (直接経費: 33,400千円、間接経費: 10,020千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 24,050千円 (直接経費: 18,500千円、間接経費: 5,550千円)
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キーワード | 最下部マントル / 粘性率 / ポストペロフスカイト / ペロフスカイト / マントル最下部層 |
研究開始時の研究の概要 |
地球のマントル最下部層に大規模横波低速度領域が偏在している。速度低下の主な原因として、周囲のマントルに比較してこれらの領域が高温であるという議論(熱起源論)と、化学組成が異なっているという議論(化学的不均質起源論)の2つが主流となっている。一方で、この領域は比較的高粘性であるという推定がある。一般的に粘性率は高温であるほど低い傾向があるため、粘性率と速度構造は逆相関を示していることになる。逆相関は何に由来するのか、あるいはこの領域の起源は何かという疑問を、構成物質の粘性的性質を調査することにより解明し、地球深部の温度や化学構造などに新たな制約を与える。
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研究実績の概要 |
マントル最下部には、いわゆる大規模低速度構造という地震波速度構造の異常が観測されている。一方で、地震波速度のような弾性的な情報ではなく、粘性率という塑性的な情報として、マントル最下部での多様性も指摘されている。そこで、本研究では、マントル最下部を構成している物質の粘性率を調査することにより、マントル最下部の粘性率構造との照合を可能とし、大規模低速度構造の原因に関して新たな制約を与えることを目的としている。 マントル最下部は、ケイ酸塩ペロフスカイト(端成分は、MgSiO3)であるブリッジマナイトとその高圧相(低温相)であるポストペロフスカイトで構成されている。このポストペロフスカイトは、120 GPa以上の高圧下のみで安定である。そのようなポストペロフスカイトの粘性率を実験的に決定することが本研究の鍵となる。そこで、高圧実験技術を発展させケイ酸塩ポストペロフスカイトを対象にすることと、結晶構造が類似しているアナログ物質を用いて粘性を含めたレオロジーを詳細に研究するという2つのアプローチで研究してきている。 前者においては、高圧実験の遂行において必要となる圧力定点の決定に目処が付いてきた。具体的には、Fe2O3の電気抵抗変化と圧力の関係を明らかにした。これにより、30 GPa以上での圧力値を研究室に設置している高圧装置において知ることが可能となり、より発生での粘性実験を進展させられる。後者においては、NaNiF3を用いた研究を行ってきており、変形実験と拡散実験から粘性率を決定する。変形実験については、ほぼ必要なデータの取得は完了している。その結果としては、ペロフスカイトとポストペロフスカイトで粘性に大きな相違はないこと、ポストペロフスカイトで結晶格子の選択配向の影響は小さいことが分かった。また、拡散実験のため、数百ミクロンの単結晶ポストペロフスカイトの合成が可能なってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NaNiF3ペロフスカイトおよびポストペロフスカイトについて変形実験を行った。計算機による先行研究において、ポストペロフスカイトは拡散において強い結晶方位依存性があることが報告されている。そこで、結晶方位により粘性率に違いが生じるかどうかを確認する実験を行った。実験は、選択配向を観測しつつ、変形実験における機械的データを取得するということで、放射光によるX線高温高圧その場観察手法を用いた。これまでの結果と合わせることで、ポストペロフスカイトとペロフスカイトの粘性率差、また、ポストペロフスカイトの粘性率への結晶方位依存性が明らかになりつつある。また、より詳細に結晶方位依存性を検討するための拡散実験に必要な単結晶合成も可能となってきている。さらに、前述したようにケイ酸塩での実験に向けての準備も整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
アナログ物質を用いた変形実験に関して、選択配向に関する一部のデータを除き、大体のデータ取得はなされたと考えられる。そこで、今後は、より詳細に粘性率の結晶方位依存性を調査すべく、単結晶を用いた拡散実験に注力していく。このことに関して、昨年度は単結晶合成法の開発を行ってきた。その結果、現在では、長軸1 mm、短軸0.2 mm程度の単結晶の合成が可能となってきている。このサイズでも拡散実験および分析は可能であるが、より精度の高いデータを取得するために、短軸0.6 mm程度の合成を行い、拡散実験を行う。拡散実験自体は、昨年度立ち上げた薄膜形成装置が有効に機能すると期待できる。 拡散実験は、温度圧力保持時間が長く、時間制限のある放射光実験は適していない。そこで、これまで圧力定点として約30 GPa程度であった圧力を、~60 GPaまで拡大したことは、放射光を用いること無くより高圧での定量性の高い実験を可能とすることであり、拡散実験を進めていく上で鍵となる。今後は、より安定して高温高圧を発生できるように技術開発を行い、ポストペロフスカイトの拡散実験を遂行していく。
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