研究課題/領域番号 |
22H00181
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
渋谷 岳造 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), 主任研究員 (00512906)
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研究分担者 |
須田 好 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (00792756)
眞壁 明子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), 准研究副主任 (90752618)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2023年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2022年度: 11,180千円 (直接経費: 8,600千円、間接経費: 2,580千円)
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キーワード | 炭化水素合成 / 蛇紋岩 / 熱水系 / 高温高圧実験 |
研究開始時の研究の概要 |
1960年代の報告以来、蛇紋岩熱水系で発生する熱水は、非生物的に合成されたメタンなどの炭化水素を特異的に含んでいることが知られるようになった。しかし、現在の観測データを説明する化学反応とその地質プロセスについて未だ議論が収束していない。そこで本研究では、これまで考えられてこなかった蛇紋岩熱水系深部と無水マントルの境界における化学反応に着目し、新たな作業仮説に基づいて再現実験を行う。そして、実験的に検証された「蛇紋岩熱水系深部-無水マントル境界における炭化水素合成モデル」を構築する。この研究は、極限環境微生物学、惑星科学、エネルギー開発など、異分野への波及効果が期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、蛇紋岩熱水系における非生物的炭化水素合成反応の物理化学条件依存性(温度・圧力・初期流体組成・触媒組成)とそれを駆動する触媒生成メカニズムを明らかにし、実験的に検証された「蛇紋岩熱水系深部-無水マントル境界における炭化水素合成モデル」を構築することを目的としている。 令和5年度は、蛇紋岩熱水系深部-無水マントル境界を模した高温高圧水-岩石反応実験を継続して行った。渋谷(代表)は、Fe-Ni合金によって駆動される非生物的炭化水素合成反応の温度依存性を検証するために行っている300℃と425℃(いずれも500気圧)の実験を継続し、随時溶液のサンプリングおよび化学分析を行った。また、天然のかんらん石を用いた実験についても同様に継続した。須田(分担)は、産業技術総合研究所の同位体ラベル試料専用のラボにて、水-岩石反応実験で得られた溶液試料の溶存有機酸分析を行い実験で発生した有機酸の炭素同位体ラベル率を決定した。眞壁(分担)は、水-岩石反応実験で得られる溶液試料の溶存ガス及び揮発性有機物分析を行い、実験で発生したメタン等揮発性有機物の炭素同位体ラベル率を決定した。 以上の結果、天然のかんらん石を用いた実験では、実験開始後8ヶ月で同位体比分析が可能な量のメタンや有機酸の発生が確認された。この現象について、メタン等の発生のタイミングや発生速度、炭素同位体ラベル率など、詳細な分析と解析を行った結果、メタン等の発生はコンタミネーションの影響ではなく非生物的二酸化炭素還元炭化水素合成反応によるものであることがわかった。このことは天然の蛇紋岩熱水系において、非生物的二酸化炭素還元炭化水素合成が起きうることを強く示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、当初の想定を超えて、かんらん石を用いた実験においてメタンや有機酸などが発生した。メタン等の発生するタイミングや速度がコンタミネーションであるとは考えにくかったため、詳細な分析を行う必要が生じた。このため、当初予定していた、炭化水素合成反応の圧力依存性、触媒組成依存性を明らかにする実験を先送りし、かんらん石を用いた実験で発生したメタンや有機酸の同位体比分析、熱力学的解析等を主に進めた。その結果、発生したメタンはコンタミネーションではなく、二酸化炭素還元炭化水素合成反応によるものであることが判明した。先送りした実験があるものの、本研究課題において大幅な進捗があったことから、全体の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
先送りした非生物的炭化水素合成反応の圧力依存性、触媒組成依存性を明らかにする実験を開始する。一方、初期物質にFe-Ni触媒を含んでいないにもかかわらず天然のかんらん石を用いた実験では非生物的二酸化炭素還元炭化水素合成反応が進み始めた。したがって、次年度以降はこの実験を継続して行うとともに、初期条件をわずかに変えた実験を行う。これにより、本研究で得られた非生物的二酸化炭素還元炭化水素合成反応のデータの再現性を確認するとともに、反応のメカニズムに制約を与える。
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