研究課題/領域番号 |
22H00186
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分18:材料力学、生産工学、設計工学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小橋 真 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (90225483)
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研究分担者 |
寺坂 宗太 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 研究員 (50850343)
鈴木 飛鳥 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (90802603)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
40,300千円 (直接経費: 31,000千円、間接経費: 9,300千円)
2024年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2023年度: 11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
2022年度: 12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
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キーワード | 液相焼結 / アルミニウム / 放射光CT / 積層造形 / BJT方式積層造形 / 焼結助剤 / AL-Cu合金 / モンテカルロシミュレーション / Al-Cu-Mg合金 |
研究開始時の研究の概要 |
金属積層造形の課題であるコストと生産性を改善する造形方式として、粉末焼結を利用するバインダージェッティング(BJT)方式が注目されている。しかし、難焼結性材料であるアルミニウムへの適用は進んでいない。そこで、BJT方式積層造形のオープンマテリアル化(材料選択の自由度向上)に資する「化学的液相焼結」を提唱・研究する。これは、化学的自由エネルギーを焼結駆動力に寄与させる新しい液相焼結であり、(i)計算状態図による焼結助剤合金の設計、(ii)マルチスケールその場観察による化学的液相焼結挙動のダイナミクス解明、(iii)モンテカルロ法焼結シミュレーションを援用した液相焼結時の緻密化支配因子を推定する。
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研究実績の概要 |
バインダージェッティング(Binder Jetting:BJT)は付加製造法(Additive Manufacturing:AM)の一つで,原料粉末に液体バインダーを噴射して接合したグリーン体を作製し,脱脂・焼結の工程を経て最終製品を作製する方法である. BJTにおいて焼結は製品の相対密度を高める重要な工程である. 液相焼結は母材粉末よりも低融点な助剤粉末を添加し,助剤の融点以上母材の融点以下の温度に保持する. 焼結中は助剤が液相となり,液相内の高速な拡散を介して固相焼結よりも緻密化が早く進行する. 液相焼結は, 添加した助剤が溶けて全体に広がることで, 粒子の再配列, 収縮, 消滅が起こり, 焼結が完了するが, その詳細な焼結挙動は明らかになっていない. これは焼結中の様子をリアルタイムで観察できていないためであると考えられる. 本研究では,Alの液相焼結の焼結挙動の解明を目的に, 焼結の前後, 焼結中をそれぞれ段階別に観察することとした. 焼結前後は微視組織観察を行い, 焼結途中は放射光X線CTによる観察を行って昇温中, 焼結温度で保持中, 冷却中にそれぞれ起こる挙動を調べた. ホットプレスで100 ℃で圧粉した焼結体の相対密度は92.4 %だった. SPring-8にて焼結を行いながら放射光X線CTで撮影した.その結果、液相焼結助剤の融解,液相の固相粉末間への浸透,気孔の生成などが観察できた. また、モンテカルロ焼結シミュレーションを活用して,個々の気孔の消失・残留を追跡した.さらに,各気孔の消失・残留のメカニズムを理解するために,焼結前の各気孔のサイズや位置等の特徴から焼結後に残留する気孔を推定することを試みた.その結果,100 MCS において焼結体中央付近に存在する大きな気孔が 1000 MCS において残留する確率が大きいことを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、おおむね計画書に記載した内容で研究を進めている。 Al-Cu合金助剤を用いたアルミニウム液相長欠過程の4D観察を通じて,焼結挙動を把握することができた.特に,固相状態では空間解像度,元素間のコントラストも明瞭で,現象の理解を進めるための有用なツールであることが確認できた.また,バッジ式ではわからない動的な焼結現象も観察できた.焼結助剤が融解して液相となると固相粉末とのコントラスト差が小さくなるという課題が見られた.これについては,次年度以降にも測定温度を下げてコントラストを顕著にするなどの工夫を行い対応をする. モンテカルロ法による液相焼結シミュレーションついては、まずは固相焼結を想定して、貴校の形成メカニズムを解析することができた.残留気孔の生成を確立的表現で示すことができるようになり,解析技術として大きく進歩した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は、基本的な焼結挙動を理解するために、Al-Cu-Mg合金を用いた液相焼結において,放射光施設(SPring-8)を利用した放射光CTにより焼結過程のその場観察を実施する。特に焼結助剤が融解後の固相粒子とのコントラスト差を大きくするように改善を行う.具体的には,焼結温度を下げて,液相中のCu濃度を高くすることを試みる.4D観察に適切な測定条件を明らかにした後,焼結助剤の共晶温度を超えて以降の液相の流動状態を追跡する. 液相助剤粉末が融解し、アルミニウム粉末表面を濡れ広がる過程のその場観察も実施する。顕微鏡観察炉を用いてデジタルマイクロスコープまたはレーザ顕微鏡により観察する。それにより、液相焼結助剤の組成とアルミニウム粉末表面の拡張濡れ挙動の関係を明らかにする。 モンテカルロ法により液相焼結シミュレーションは、固相焼結を実施中であるので,今後は相互不溶解の固液系をモデルとして実施する。シミュレーションに改良を加えて、固相成分が液相に溶解する場合、液相成分が固相粒子に拡散する場合を想定したシミュレーションについても検討を行う。シミュレーション技術を確立した後に、助剤量、助剤の分布、アルミニウム粉末の初期配置などの諸条件と焼結後の残留気孔の状態との相関関係の有無についても検討する。粉末の初期配置については、パーシステントホモロジーにより定量的に評価することを検討している。 最後に、焼結体の形状安定性を評価するために焼結前後の寸法変化を計測する。円柱状試料の直径変化を計測することから始め、より複雑な形状の寸法変化の計測を検討する。また、焼結体の強度および強度と微視組織の関係についても評価する。
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