研究課題/領域番号 |
22H00187
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分18:材料力学、生産工学、設計工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
有馬 健太 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (10324807)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2023年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2022年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
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キーワード | シリコン表面 / ウェットエッチング / 原子層 / 自己組織化 / トレンチ加工 / 半導体表面 / シリコン / ナノ材料 / エッチング / 固液界面 |
研究開始時の研究の概要 |
原子層レベルまで厚さを低減したシリコン(Si)結晶は、多用な電子・光学デバイスへの適用が期待される次世代材料である。本研究では、複数のウェットプロセス(薬液を用いた化学処理)を巧みにSi結晶層に適用する。これにより、厚さと幅が共に制御された、Si原子層リボンを簡便に形成することを目的としている。また、得られたSiナノ構造体について、原子構造や電子状態等の特性を正しく計測・評価することも目指す。
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研究実績の概要 |
シリコン(Si)結晶で原子レベルの厚さを持つ原子層は、多様な電子・光学デバイスへの適用が期待される新材料である。しかしこの原子層材料は、実験的に得ることが難しいという欠点がある。 本研究では、私の研究グループが培ってきた、四種類のウェットプロセスから成る独自のシーケンス(以降、自律型ウェットナノ加工)をさらに高度化し、微傾斜Si(111)表面を持つSOI(Silicon on Insulator)層に適用する。これにより、横幅が制御され、かつSi表面のダングリングボンドが水素(H)原子で終端化された、Si原子層リボンを自己組織的に成型することを目指している。このリボンは、大気中でも比較的酸化しにくく、安定に維持できるという特徴を持つと予想される。さらに、このリボンをSOI層から液相プロセスにより剥離し、構造や電子物性に関する特性を評価することを目標とする。 上記の背景や研究目的に基づいて、今年度は、①原子平坦面から成るテラス/ステップ構造の形成とSOI層の薄層化、②SOI層表面ステップ端への連続的なAgナノワイヤ群の形成 の二つを計画し、研究を進めた。本研究で整備を進めている超高真空型の走査型プローブ顕微鏡システムを用いて、Siバルク基板上に形成したテラス/ステップ構造をナノメートルスケールの空間分解能で可視化することに成功したり、Ⅳ族系の原子層リボンにおいて幅に応じて周期的にバンドギャップが変化することを第一原理計算で明らかにするなど、着実に課題を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
[1] 原子平坦面から成るテラス/ステップ構造の形成とSOI層の薄層化 本研究では、Si結晶層(SOI層)/シリコン酸化膜(SiO2膜)/Si支持基板の構造を持ち、面方位(111)の表面を持つSOI(Silicon on Insulator)ウエハを初期基板とする。昨年度までの結果に基づいて、SOI層表面に微傾斜角を形成するウェットエッチングプロセスを模索した。そして、フッ硝酸に酢酸を添加したエッチングと、その後の異方性エッチングを組合わせることで、表面ラフネスを抑制したSOI層表面を形成できる見通しを得た。また、本研究で整備を進めている超高真空型の走査型プローブ顕微鏡システムを用いて、Siバルク基板上に形成したテラス/ステップ構造の観察を行った。具体的には、まず、異なる二つの観察モード(STM、nc-AFM)でテストサンプル(高配向性グラファイト、アルカリハライド結晶)の原子像観察を行った。続いて、ナノメートルオーダーの横方向空間分解能にて、Siバルク基板上に形成されたテラス/ステップ構造を可視化することに成功した。また、作製するSi原子層リボンの物性を予測すべく、第一原理計算による理論解析を進めた。第一段階として、同じⅣ族系の炭素原子から成るリボン(グラフェンナノリボン)において、リボン幅とバンドギャップの関係を調査した。その結果、バンドギャップが三原子層幅毎に周期的に変わることを見出す等、Si原子層リボンの光学デバイス応用に繋がる興味深い結果を得た。
[2] SOI層表面ステップ端への連続的なAgナノワイヤ群の形成 SOI層表面にAgナノワイヤ群を形成することを目指し、Siバルク基板を用いてウェットプロセスの最適化を進めた。そして、Si表面の原子ステップ端を終端する化学種を制御することが、連続的なAgナノワイヤを高い制御性で得る上で鍵になることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
上述した進捗を踏まえて、今後はさらに、SOIウエハ上のSOI層をウェット加工するためのプロセス条件の最適化を図る。特に、階段構造を形成する前のSOI層について、表面粗さを増やすこと無く均一に薄層化する技術は、本課題を遂行する上で鍵となる。次年度は、フッ硝酸と酢酸の混合溶液(HNA溶液)の薬液混合比をさらに厳密に最適化する等により、高度化を図りたい。 次に、第一原理シミュレーションを積極的に本課題に取り入れたい。例えば、Si階段構造のステップ端のみに選択的に金属ナノワイヤ形成を実現するため、溶液の組成に依存したステップ端の安定構造をシミュレーションにより解明する。また、Si原子層リボンの物性についても計算機により明らかにする。 加えて、現在開発を進めるプローブ顕微鏡システムについても、試料表面の極低温化を取り入れるなどにより、得られたシリコン表面構造の高分解能観察に取り組む。 次年度は、本課題に関連して、国内/国外学会において招待講演を受けることが既に内定しており、ウェブサイトの更新なども含め、本研究の成果を広く外部に公開したい。
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